東京都心部にもかかわらず多くの緑地に恵まれ、街路樹が立ち並んでいる。その一角に、歴史を感じさせる煉瓦造りの建物と、ガラス張りの真新しい建物が混在する大学病院がある。先端医療の粋を結集したその病院は、脳神経外科の名医が揃うことでも知られる。
その一室に、俳優の松方弘樹(73才)が入院している。豪放磊落な名優には古くからの友人や、ライフワークともいえる釣りの仲間も多いが、その病室を見舞う人の姿はない。ただ、昼夜を問わずベッドの横にぴたりと寄り添う女性がいるだけだ。
「脳リンパ腫」という病名が公表されて3か月が経った。医療法人社団進興会の理事長で医師の森山紀之氏が解説する。
「脳リンパ腫とは脳の深部にできる悪性のリンパ腫で、発症率は10万人に1人という非常に稀な病気です。腫瘍が脳内にあるため手術が難しいこともあり、抗がん剤の投薬や放射線治療が一般的ですが、治療法はまだ充分に確立されていません。
脳は体のさまざまな神経を司っています。腫瘍の場所によっては、体の麻痺や失語症、視力視野障害や認知能力の低下が起こることもあります。また、腫瘍によって脳が圧迫されることで激しい頭痛、嘔吐に襲われます。進行も速く、適切な治療を行わないと、診断から数週間や数か月で命を落とす人も多い難しい病気です」
今年2月上旬、頭痛や体のしびれなどの体調不良を訴えた松方は、医師の診断を受けて冒頭の大学病院に入院。予定されていたコンサートや6月から上演予定だった主演舞台などの仕事をすべてキャンセルした。懸命の治療にかかわらず、その症状は悪くなる一方だという。
「入院時には右手右足に軽いしびれがある状態でした。その後、開頭して生体検査をし、脳リンパ腫という深刻な状態であることがわかりました。一時は危険な状態に陥ったこともあったそうです。現在は数種類の抗がん剤による治療を進めていますが、下半身がほとんど動かない状態だと聞いています。自力でベッドからは起き上がれず、意識も混濁することが多くなってきているそうです」(松方の知人)