7月10日に参議院選挙が行われる。6月22日の公示日以降は、公職選挙法に基づき、ニュース番組はより公平性が求められる。特定の候補者やタスキ、選挙カーばかりが映らないような配慮が行われ、テレビ出演する各党幹部の発言の時間についても“平等”になるよう細かい配分がなされる。こういった選挙報道について、この頃は変化が見られている。
2014年の衆議院選挙を前に自民党は、在京テレビ局に対して「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」と題する文書を配布した。その結果、何が起きたかといえば、選挙に関する報道時間の激減だった。
駒澤大学専任講師で政治学者の逢坂巌さんの調査では、2014年の総選挙では解散日から投票日までの総報道量は70時間17分だった。これは、この10年間で最も報道量の多かった2005年の総選挙のときのわずか5分の1、最も少なかった2003年に比べても半分の少なさだった。逢坂さんはその原因が自民党からの文書にあったと指摘する。
「文書が出されたタイミングと、報道量が激減したタイミングがぴったり重なります。特にワイドショーが取り上げなくなりました。ニュースも減っています。これは圧力がかけられたからと言うよりは、現場が“忖度”したから。後で面倒なことになるくらいなら報じないと判断した可能性は高い。あの文書は結果として、報道する側に大きな影響を与えました」
現場もそれを認めている。
「政党の色のついたコメンテーターは出せませんし、出てもらう人には、特定の党だけを批判する意見は遠慮してもらいます。街頭インタビューでは、賛成と反対、両論を紹介するのがマストです。ほとんどが反対でも、同じ数だけ賛成の声も取り上げます。それなら公平で、クレームもないだろうという判断です」(民放のニュース番組のプロデューサー)
バランスをとるあまり、私たちが知りたいことではなく、“彼ら”の伝えたいことばかりが報じられるとしたら、それは私たちの正しい判断材料となりうるのだろうか。
『NNNきょうの出来事』(日本テレビ系)の元キャスターでジャーナリストの櫻井よしこさんはこうした状況に対して、「ニュース番組のすべてを信じないでほしい」と語った。かなり刺激的な言葉だが、その真意はこういうことだ。