堺雅人主演で好評のNHK大河ドラマ『真田丸』。7年ぶりの大河出演となる高嶋政伸(49才)演じる北条氏政が束ねる北条家の滅亡が、22回(6月5日放送)から描かれ注目を集めている。高笑いなどの“怪演”でも話題となっている高嶋に、三谷幸喜の脚本や役作りなどについて熱く語ってもらった。
――インパクトの強い、北条氏政の役作りの方法は?
高嶋:三谷さんから直接電話をいただいて、北条氏政のイメージは、映画『クォ・ヴァディス』の皇帝ネロや、大河ドラマ『武田信玄』で中村勘三郎さん(当時、勘九郎)が演じられた今川義元という、ちょっと浮世離れした武将だとおっしゃっていて、両方見ました。それから実際の北条家の歴史本を読んだりして、ぼくなりに北条氏政役を膨らませて臨みました。
大河ドラマは今までに4本やらせていただいていますが、1年間通して役を演じるときに、4パターン役作りが必要になるなと感じたんです。青年期、中年期、壮年期、老年期ですね。
今回の北条氏政に関しては、1回シフトチェンジは必要だなと感じました。最初の部分は非常に狡猾で、ヘビがカエルを生殺しにするように、じわりじわりと攻めていく。そういう、ちょっと薄気味悪い人物像でやりました。
――北条氏政は演じやすい人物だった?
高嶋:三谷さんの台本は一見やりやすい印象があるんですけど、練習を重ねていくと、途中でわからなくなっちゃうんです。内野(聖陽)さんも言っていたんですけど、「一口目はとってもおいしいんだけど、そこからだんだんわからなくなる」。ぼくもその通りだなと思います。
すごい大音量と静寂とか、生と死、名誉とスキャンダル、愛と憎しみとか、対極にあるものが一緒くたになっているような人物で、こりゃ大変な役を受けちゃったなと。
――23回で氏政は、おしろいを塗る奇行に走りますが、実は家臣たちに、うろたえていることを気づかれないためだった。
高嶋:優秀な武将だったと思うんですけど、時代を読む力が、ほんの1mmだけ足りなかったのかなと思うんです。その1mmが、ものすごい差だった。
それと同時に、顔におしろいを塗っていくんですけど、厚くなるほどヒビは入るし、崩れていきますよね。心の中が崩れていくのと同じように。壊れたピエロみたいに滑稽に見えますけど、本当は典型的な武将だった。時代のほうが1mmだけ早かった。
――氏政の最期を演じる意気込みを教えてください。
高嶋:初めて信繁さんとの1対1のシーンがあるので、そこは思い残すことのないように演じたいと思います。堺さんという才能のある役者さんの胸をお借りして、いろんなものを吸収して、そのシーンの中で全部お返ししたいなと思います。
――怪演と言われることを、どう思われていますか?
高嶋:基本的に本番だけやっていると、演技のクォリティーが下がる気がします。別の戯曲や台本を毎日読んだりします。変化球以外の役をやるために、太宰治の『トカトントン』や、古典的なものを声に出して読むとか、若い役者さんと2人芝居を読むとか、そういうのをやっています。きちんとした基礎がないと、中途半端になっちゃうので、そうはなりたくないんです。
音楽もよく聞きます。エリック・ドルフィーは残虐性と無邪気さが演奏の中で出しているので、その曲を聞いて気持ちを高ぶらせたり、ジョン・コルトレーンのカルテットとか、重たい雰囲気の曲を聞いて、ダークな感じを出していこうと思いました。
――ほくそ笑む顔などが印象的でした。計算された演技?