建設費や人件費の上昇などに伴う価格高騰で、販売不振に陥っている新築マンション。不動産経済研究所の調べによると、今年1月から6月までに首都圏で売り出された新築マンションの販売戸数は、昨年同期比より19.8%減少し、バブル崩壊後の1992年以来の低水準になったという。
そこで大手デベロッパーは少しでも消費者の購入意欲を掻き立てようと、チラシやオフィシャルサイトなどを使い、主力物件の広告合戦を繰り広げている。だが、「派手なイメージ広告に騙されてはいけない」と話すのは、住宅ジャーナリストの榊淳司氏だ。
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新築マンションの広告は、よく「ポエム」と呼ばれる。その理由は、あまりにも現実とかけ離れているからだ。いくつか例を挙げてみよう。
数年前に「天地創造」というキャッチコピーを打ち出した、さる財閥系大手不動産デベロッパーが東京近郊に開発した、600戸規模のマンションがあった。
ご存じの通り「天地創造」とは旧約聖書の冒頭で「光あれ」から始まる、神様がこの世界を創ったというエピソードを言うフレーズ。それをたった600戸程度のマンションのキャッチコピーに使うのだから、それはもうポエムとしかいいようがない。
そのマンション、実は1年以上前に完成している。先日、現地を見に行ったら全体の半数も入居しているとは思えない状態だった。彼らにとっての「天地」は「創造」できたが、住む人は思うように引き寄せられていない様子だった。
これは10年ほど前の例だが「○○涼子」という人気女優をイメージキャラクターに登用した。このマンションの折り込みチラシの表面には、彼女の写真と「感度リョーコー」というキャッチコピーが踊った。これには正直、あまりのバカバカしさに腰が砕けた。
こういったマンションポエムを横目で見ながら笑っている分にはいい。しかし、そのマンションの購入を真剣に考えている方には笑えない。そこで今回はマンションの広告から、その物件の「真の姿」をあぶりだすノウハウをお伝えしたい。
まず、我々プロはマンション広告の中でどこを最初に見るのか? よく「不動産の価値は9割が立地で決まる」という。まことにその通りだ。だから、我々は最初に「現地案内」や「MAP」という項目を探し出してクリックする。そして、どのあたりにあるのかを大まかに把握する。
次は「スペック」だ。マンションの場合「○○駅徒歩○分、3LDK 00.00平方メートル、0000万円」に尽きる。つまり最寄り駅とそこからの徒歩分数、間取りと面積、価格の3要素。これだけで、ほぼ資産価値が決まる。
これらの要素は、「概要」という新築マンションのオフィシャルサイトの中では、もっとも地味に作られているページに集約されている。はっきり言って、「現地案内図」と「概要」があれば、そのマンションのおおよそのことが分かる。
あと、我々が見るとすれば「全体計画図」であろうか。敷地形状と建物や共用施設の配棟計画である。ここで、そのマンションの設計がどの程度ていねいになされているかをうかがい知ることができる。しかし、これはプロだから分かること。一般の方には少し難しいだろう。
そのマンションの「共用施設」も、プールや温浴など、よほどのものでない限りはささっと見るだけ。「設備・仕様」というのは大手ならどこも似たり寄ったりなので、チェックさえしない。トップページや「コンセプト」というのは、その後で時間があれば覗く程度。
つまり「天地創造」とか「感度リョーコー」とかいったところは、そのマンションの真の価値を見極めるためには、何も関係がない。むしろ邪魔だ。