志村けん、66歳。言わずと知れたお笑い界の大御所である。『天才!志村どうぶつ園』(日本テレビ系)は今年で12年目の長寿番組。『志村けんのバカ殿様』(フジテレビ系)は先日、30周年を迎えた。
左団扇──と言うと語弊があるかもしれないが、新しいことにチャレンジする必要がない立場だ。
ところが志村は、「体力的には厳しいと感じることもありますよ」と言いながら、毎年、あるチャレンジを続けている。それが、今年11年目を迎える舞台『志村魂』だ。7月30日の東京・明治座を皮切りに、名古屋、大阪と約1ヶ月間、27公演を行なう。
公演まで3週間を切った某日、都内のスタジオでは、志村けん一座の真剣な稽古が続いていた。休憩時間であっても、志村は打ち合わせや台本の読み合わせなど、自主的に役を深めていく。通し稽古では、内容のおかしさにスタッフから笑いがおこるが、出演者からは笑い声も無駄口も一切漏れない。張り詰めた緊張感。少しの妥協もない。バラエティで見せる志村とは、別人かと見紛うような表情だ。
なぜこうまでして、志村は舞台にこだわるのか。
「ザ・ドリフターズの『8時だョ!全員集合』という舞台で育ったというのもあるけど、舞台はやっぱり特別だよね。俺のお笑いの基本」
志村にとって「お笑い」は、偶然やアドリブではなく、あくまで「計算」なのだと言う。
「テレビと違って、舞台だとお客さんの生の反応が手にとるようにわかる。自分の計算した通りの反応が返ってくると、精神的な疲労も、体の疲れも、全部吹き飛ぶ。その充実を感じたいんだろうね」
狙い通りの笑い──それはどう生み出されるのか。志村に問うと、意外な答えが返ってきた。