「皆さんこんにちは。私はオードリー・キコ・ダニエルです。私はここに、全ての中国の『朋友』に対し、最大級の謝罪を表します」。カメラに向かって3秒間ゆっくりと頭を下げ、神妙な顔つきで話し始めた女性は、女優の水原希子(25才)だった。
7月15日、彼女は中国の動画配信サイトに5分間の謝罪メッセージを投稿した。本名を名乗り、英語で語りかけたこの動画は、再生回数30万回を超えてなお視聴者を増やしている。
発端は、中国のアーティストが天安門に中指を立てている写真作品に、水原がインスタグラムで「いいね!」とつけたこと。これが、中国内のネットユーザーからのバッシングを引き起こしたのだ。
「同時に水原が靖国神社に参拝していたとされる写真まで出回り、中国人から“侵略戦争を美化している”と叩かれた。彼女の謝罪は、これら一連の騒動を受けてのものでした」(在中ジャーナリスト)
水原は動画で、靖国神社の写真が自分ではないことを明かし、こう話した。
「私は現在日本で住んでいますが、生まれはアメリカです。父はアメリカ人、母は日本で生まれた韓国人です」
「私は2才の時に家族で神戸に移りました。多元的な文化を背景にして育ちました。異なる人々の中でのお互いを尊重する大切さを貴いこととしてきました」
「在日中国人の友達もたくさんいます。とても親しく私を気遣ってくれます。中国の歴史と魅力的で興味深い文化を知ることができました。私は決して中国の朋友を裏切ったりしていませんし、する意図もありません」
彼らの誤解を解きたい──そんな想いのこもったスピーチだったが、水原にとって中国は無視できない国でもあった。
「ファッション業界や映画を含め、今や中国市場が世界を席巻しています。海外のトップモデルがパリではなく中国を目指す時代です。女優とモデルを両立する希子さんにとって、中国人に敵視されたままの状況は非常によくない。彼らの苛烈な反日感情をそらすためには“母が韓国人”ということを隠すより“日本人ではない”という出自を打ち明ける方がいいと判断したのでしょう」(ファッション業界関係者)
だが、水原には誤算があった。カミングアウトした彼女を、今度は日本のネット上に巣喰うレイシスト、通称“ネット右翼”が袋叩きにしたのだ。
《日本に寄生して日本人の振りをして仕事して。韓国帰れよ。要らないから》
《こんな奴に日本人面されても迷惑。クソ外国人が》
《アメリカ人と韓国人のハーフで日本人要素0なのに、なんで日本名で日本で活動してるんだよ》
目を背けたくなるヘイトスピーチの数々。バッシングを浴びながら、それでも水原はアジアの人々に寄り添いたいと強い思いを持ち続けているという。
◆嫌がらせは日常茶飯事
水原は1990年、油田の街で知られるテキサス州・フォートワースで生まれた。母親はアメリカン・エアラインのCA。父親は音楽と自由を愛する“ヒッピー”だったという。
水原の名前は、オードリー・ヘップバーンの大ファンだった父親が命名した。「将来、世界で活躍する大女優になるように」。そんな願いが込められていた。
水原が2才の時に一家は日本へ。神戸市に移住した。英語と日本語が飛び交う家庭に育った水原にとって、学校はつらい場所だった。