その名はよく聞くが、縁遠い観光地は多くある。特に首都圏からの旅先として、また旅慣れない者にとって、北海道や九州といった遠隔地は旅先としての現実味がない。昨今、LCC(格安航空会社)のようなリーズナブルな移動手段が定着しつつあるが、アクティブな旅行者層は、どうせ飛行機に乗るなら格安に海外へというケースも多い。
一方、国内のかような観光地のホテルに着目してみると、訪日外国人客の激増などの影響もあり、これまで特に注目されてこなかったホテルの拡充が密かに進んでいる。
たとえば、北海道のニセコ。ウィンターリゾートとしての実力は折り紙付きで、欧米からのゲストを中心に周知されているエリアだ。
これまでニセコは、夏期は北海道の涼しい観光地の1つくらいに捉えられていたが、夏期の営業にも力を注ぐ利用価値の高い滞在型のホテル群が誕生しており驚く。「カサラ・ニセコビレッジ・タウンハウス」のような、自然に溶け込むラグジュアリー感をもって、徹底したサービス体制が夏にもその真価を発揮しており、知る人ぞ知る夏のラグジュアリーリゾートとして支持を受けている。
他方、九州の観光地でいま注目のホテル群は、「ハウステンボス」直営の4ホテルと言えよう。
ハウステンボスといえば、誰しも名前は聞いたことがある長崎県の観光名所だ。しかし、実際に出向いたことのある方は意外に少ないのではないだろうか。4つのホテルはそれぞれターゲティングが異なる。換言すると、利用者のホテルチョイスには分かりやすいホテル群といえるが、それぞれのホテルコンセプトの輪郭はぼんやりしている。
ハウステンボスには直営4ホテルの他にも、利便性・機能性などを重視したホテルはいくつかあるが、昨年開業した「変なホテル」を除く直営3ホテルは、ハウステンボス本体と運命を共にしてきたホテルだ。それは、経営会社や運営会社の変遷にホテルのコンセプトが翻弄されてきたことも意味する。苦汁をなめた時代を経験したホテルもある。
そんな直営ホテル群にとって、澤田秀雄社長率いるエイチ・アイ・エス(H.I.S.)が再建の道筋を示したことは新たなシーンとなった。
澤田社長のエッセンスが注入されたハウステンボスは、観光地としてのポテンシャルを驚異的に押し上げた。いつ何度来ても飽きない仕掛けゆえ、この夏休みシーズンはさらに注目されている。だからこそ直営4ホテルの“いま”が気になる。各ホテルへ出向いてみた。