北方領土問題について、これまで「4島(国後、択捉、歯舞、色丹)一括返還」を唱えてきた安倍晋三首相が、外交的功名心から方針を転換し、ロシアのプーチン大統領に歯舞、色丹の「2島先行返還」で譲歩しようとしていると見る向きもある。
そんな安倍首相には12月に行われる日ロ交渉を成功させなければならない事情がある。
「地球儀外交」を掲げて世界100か国以上を訪問したものの、大きな成果がないばかりか、北朝鮮との日朝交渉は完全に暗礁に乗り上げ、「私の任期中に拉致被害者全員を帰国させる」という公約達成は絶望的になっている。
日ロ交渉でも日本側は経済協力を決定しており、領土ゼロ回答だと「外交の安倍」の面目丸つぶれとなってしまう。
それだけに、2島返還は事実上の譲歩ではあるが、日清戦争勝利のシンボルである春帆楼(下関の料亭旅館)での会談をセットすることで、日ロ平和条約は“第二の下関条約”であり、領土を取り戻す外交的勝利だと思わせる演出にこだわった。
しかし、国内には「2島先行返還では国後、択捉が永久に戻ってこなくなる」という反対が根強い(かつて北方領土の段階的返還論を唱えた鈴木宗男氏は失脚に追いこまれた)。安倍首相が2島返還で合意すれば、当然、反対派から“弱腰外交だ”という批判が予想される。そこで解散・総選挙を打つことで、批判をかわす。