【書評】『スマホ断食』/藤原智美・著/潮出版社/1296円+税
【評者】伊原和弘(フリーライター)
「スマホ、ご覧にならないの? 新聞でも読みます?」
先日、初めての店に入って1人で飲んでいたら、女将さんからそう声をかけられた。1人客はほかにも2人いたが、言われてみればどちらもスマホをいじっている。1人でぼんやりと酒を飲んでいた私は、よほど奇異に映ったらしい。
都内で電車に乗ると、ほとんどの人がスマホを見ている。ちなみに、内閣府が行った平成27年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、高校生のスマホを使った平均ネット利用時間は1日「約2時間半(157.7分)」。「3時間以上」と答えた者も40.9パーセントいたという。
この状況は少し異常ではないだろうか? 本書は「ネットに潜む危険」を次々と挙げながら、ネット時代に警鐘を鳴らす一冊だ。
例えば、他人の文章や画像を盗作する事件が多発しているのは、コピー・アンド・ペーストが簡単に行えるようになったから。思慮の浅い無責任なコメントが多く見られるのも、ネットが持つ匿名性と無縁ではないだろう。
数が多くて競争が激しいネット動画は、必然的に過激で刺激の強いものになっていく。わからない言葉は検索すればすぐに答えが出るため、辞書を引いて「言葉を理解し記憶する」力や「自分の頭で考える」力が衰退している…。
とりわけ、著者がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に向ける目は厳しい。
まず、SNSは個人情報を公開することが基本。ポイントカードで企業に消費傾向を分析されるように、特定の友人にだけオープンにしたつもりの個人情報も、いつの間にか思わぬところに流れている。