自分で薬や治療法の「本当の実力」を知るための指標「NNT(Number Needed to Treat=治療必要数)と呼ばれる数値が注目を集めている。
NNTは、「薬や手術の臨床試験の結果を用いて、“1人の病気の発症や死亡を防ぐのに、何人がその治療を受ける必要があったか”を表わす数字」のこと。その逆の数値である「NNH(有害必要数=その治療法で「何人に1人の割合で副作用が出るか」を表わす)も存在する。
今回、本誌は医療経済ジャーナリストの室井一辰氏の協力のもと、「the NNT」に加え、国際論文データベース「NCBI Pubmed」から、NNTが記載されている論文を抽出して分析。心筋梗塞、脳梗塞、高血圧、糖尿病に関する「命が助かる確率」を公開する(以下、NNTは「○」、NNHは「×」として表記)。
【心筋梗塞 心臓バイパス手術】
○25人に1人は死亡を回避。10~14人に1人は死に至らない(非致死性)心筋梗塞を避けられる。
×83人に1人は死亡。100人に1人は脳卒中を発症し、43人に1人は腎不全を起こす。3~5人に1人は認知機能が低下する。
心筋梗塞を防ぐために有効だとされている手術。NNHのリスクが高い印象を受けるが、室井氏は、「心筋梗塞を起こすほど心臓の状態が悪い人にとっては、25分の1の確率で死を免れられるのは大きな希望です。手術の意義は決して小さくない」と評価する。
【脳梗塞 アスピリンなどの抗血小板療法】
○79人に1人は死亡を回避。143人に1人は脳卒中の再発を防げる。
×245人に1人は胃腸などに大量出血を起こす可能性があり、574人に1人は脳出血を起こす。
アスピリンは血液の凝固を防ぐ効果があり、脳梗塞を発症した経験のある患者などによく使われる薬だ。
「デメリットは無視できないが、致死率の高い疾病だけに、79人に1人の確率で死を遠ざけられるなら試す価値はある」(室井氏)