昨夏に勃発したロッテグループの経営権争いは、創業家の脱税・裏金騒動に発展し、いまや韓国の国民、メディア、検察が結託した「ロッテ叩き」に拡大した。一連の動きを巡り、韓国のメディア関係者の間で、こんなことが囁かれている。「韓国検察がロッテグループに対する捜査に動いたのは、ホテルロッテ(韓国のホテル・免税店運営)の上場を阻止して国富が日本に流出するのを食い止めるためだ」。
事実とすれば衝撃的な話だ。実際、ロッテは裏金疑惑を受け、7月中に予定していた株式上場を自ら取り下げ、無期延期を決めた。その真相をジャーナリストの李策氏がレポートする。
* * *
韓国ロッテグループ会長の重光昭夫氏がホテルロッテの韓国での上場を打ち出したのは、企業防衛の意味合いが強い。世論の批判を受けたのは、創業家による閉鎖的な企業支配にある。上場することで財務体制をオープンにしようとしたのだ。
ならばなぜ、一連の捜査を巡って「上場阻止が目的」などという説が出回るのか。東亜日報のホン・ヨンス論説委員は、同紙インターネット版(7月20日付)に書いている。
「法曹不正を受けて低姿勢に甘んじていた検察が急に動いたのは、ロッテがホテルロッテの上場を急いだからだ。(中略)ホテルロッテが上場すれば、既存の日本人株主が、保有する株を韓国人を含む他の株主に売却する。これにより(中略)1兆ウォン以上の株の売却代金が日本に流れる。ホテルロッテが現在の支配構造を維持しても、配当名目で毎年数百億ウォンが流出する。いずれにせよ国富流出が避けられない」
韓国を代表する新聞の論説委員とは思えない、おかしな理屈だ。日本人の持ち分が売られることが何故、「国富流出」なのか。韓国人投資家が買えば、配当は国内に還流するではないか。
それでも、検察の動きについての指摘は示唆的だ。目下、元検事長の金銭スキャンダルで、検察が批判の矢面に立たされている。