石原さとみ主演のドラマ「地味にスゴイ! 校閲ガール」(日本テレビ系、水曜夜10時)が話題を呼んでいる。活字メディアに関わる者なら誰しもお世話になる「校閲さん」の仕事はどんなにスゴイのか。フリーライターの神田憲行氏が取材した。
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ドラマは初回放送で「リアリティがない」と反発もあったみたいだが、出版界の末席を汚す者として、校閲さんの仕事にスポットが当たるのは素直に嬉しい。そこで私たちが実際に経験した校閲さんたちの「スゴイ!」話をお届けしよう。こちらはリアリティ100%である。
その前に校閲さんの仕事を改めて説明する。例えば私のようなライターが原稿を書いて担当編集者に送る。編集者が内容をチェックして大きな問題が無ければ、「ゲラ」と呼ばれる試し刷りに回される。校閲さんが登場するのはこのゲラからだ。
校閲さんの仕事は大きく分けて「朱入れ」と「鉛筆」がある。「朱入れ」は固有名詞の間違いなど、絶対に訂正しなければならないもの。「鉛筆」は筆者や編集部の判断を促すもの。たとえばひとつの段落に「神田憲行」という言葉が何回も出てくるとする。日本語として間違いでは無いし、意味も通るのだが同じ言葉が出てくるのは読んでいてクドい。そこで校閲さんが「神田憲行」のところに鉛筆で丸く囲い「彼orライター?」と指摘してくるのである。「彼」か「ライター」という言葉に置き換えませんか?という意味である。またデータを一から調べ直してくれる方もいる。
「特に舌を巻いたのが、200社以上の上場企業の決算特集をやったときのこと。決算短信に目を通してくれて細かい間違いを指摘してくれました。その忍耐強さと知識量には頭が下がります」(週刊誌40代デスク)
「ある歴史資料について記事を書いたとき、校閲さんから『他の資料にはこうあるが、原稿通りで間違いないか』という指摘を受けました。結果的にはこちらの原稿で正しかったのですが、良く調べてくるなあと感心しました」(ブロック紙40代記者)
某全国紙には一流大学の理学部を卒業した校閲記者がいた。オウム事件のときには「間違いなく自分でサリンが作れる知識を持つ」と噂され、その分野の校閲担当者として活躍したとか。
「うちの新聞では大学入試のシーズンになると、入試問題とその模範解答を紙面で紹介します。解答は有名予備校の先生に依頼して作成するんですが、京都大学入試の化学の模範解答を見て彼が『答え、間違ってます』と言い出して大騒ぎになりました。念のため先生に解き直ししてもらったら、やはり間違っていたことがわかりました」(50代全国紙記者)