「日本三大都市」はどこか──。しばしば論争になるのは、「東京、名古屋、大阪」か「東京、横浜、大阪」か問題だ。人口・市内総生産とも横浜が名古屋を上回るのに対し、河村たかし・名古屋市長が「東京と横浜は印象として一緒、名古屋が日本三大都市でなんで批判されにゃあならんの?」(『週刊ポスト』8月19・26日号)と発言し、一歩も譲らない。
だが、実は日本にもう一つ、自分たちこそ三大都市の一角だと“思い込んでいる”地域がある。福岡市民だ。福岡市は人口では東京を除いて全国5位、市内総生産でも5位と数字上は三大都市にほど遠いが、少なからぬ福岡市民は、「福岡が日本三大都市の一つ」と信じてやまない。
それがまかり通るのも、彼らの郷土愛が強すぎるゆえ。福岡市出身の漫画家、倉田真由美氏も「福岡より都会って言ったら東京と大阪しかないじゃないですか?」と“三大都市伝説”を当然のように支持した上で、郷土愛を熱く語る。
「福岡はいいところばかりですよ。働くなら東京がいいけど、暮らすには福岡がいい。海がキレイで山もあって、コンパクトに都市があり、何もかもある。魚、肉、野菜、生鮮食品がとてもおいしい。地元愛を強調しすぎと言われるけど、だって、本当にいいとこなんだもん。悪いとこがあったら言ってみて、って感じですね」
たしかに、福岡の暮らしやすさは世間も認めるところ。一昔前のサラリーマンは、福岡・博多に単身赴任する男性を「博多チョンガー」(独身男性の意)、略して「博チョン」と呼び、メシがうまくて美女が多い博多での単身生活を羨んだ。
最近ではさらに、住み心地が良すぎるため、転勤してきたサラリーマンが本社に帰りたくなくなってしまう現象として「福岡ブラックホール説」まで唱えられている。