尖閣諸島周辺に、姿を現す中国漁船に国防関係者が警戒心を募らせている。漁民を装った中国の武装民兵が包囲しているからだ。この状況を、アメリカはどう見ているのか。産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が、アメリカの専門家が分析する「中国の狙い」をリポートする。
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尖閣諸島(沖縄県石垣市)に対する中国の侵略的な攻勢が急に強まってきた。
今年8月初旬から、「中国海警」の武装艦艇十数隻が尖閣周囲の日本領海にこれまでにない頻度で侵入を始めた。数百隻の民兵「漁船」団が同様に迫っている。従来の攻勢からの大規模なエスカレーションである。
中国のこの新攻勢の意図はなにか。日本はどう対応すべきか。
これら課題への見解を、アメリカ側で中国の海洋戦略や軍事動向、対外政策を一貫して追う官民の専門家たちに尋ねた。ワシントンでのこの一連のインタビューで明確になったのは、いまの尖閣事態を切迫した危機と見る認識だった。日本の反応とは決定的に温度の異なる深刻な懸念でもあった。
本来、日本が考えるべき尖閣問題をアメリカ側に問うのは、アメリカが同盟国として尖閣防衛の誓約を言明していることに加え、中国の近年の海洋進出全体に対処してきた当事国だからである。
元国防総省日本部長で現在は民間安保研究機関「グローバル戦略変容研究所」所長であるポール・ジアラ氏は中国の新攻勢を「新しいタイプの戦争手段」と呼んだ。
「中国海警艦艇と民兵『漁船』を組み合わせた攻勢はいかにも最近の中国らしい異色で挑発的な攻め方だ。日本が対処に苦しむ不正規、非対称の戦法だと言える。『漁船』が実は軍の指揮下にある民兵で、武装して尖閣上陸の能力を持つことへの認識が日本側では不足している」
ジアラ氏は中国側の最終目標は尖閣占拠であり、現在の新攻勢はその目標に向けての演習や日本側の出方の探査だろうとも述べた。