円高への警戒感、金利の低下、英国のEU離脱、中国経済の失速不安などで、秋口に入るまで株式市場は停滞が続いていたが、その中でひとり気を吐く株がある。いったいどんな産業だろうか。
「米ゴールドマン・サックスは2025年にVR・AR関連の世界市場が950億ドル(約9兆5000億円)に拡大すると予想する」(日本経済新聞2016年9月29日)。記事は任天堂、ソニー、バンダイナムコホールディングスといったゲーム関連株の堅調ぶりを伝えている。今、投資家が注目しているホットなテーマ。それが、ゲーム業界における「仮想現実(バーチャルリアリティ・VR)」だ。
10月13日、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が発売したゴーグル型端末機器「以下PS VR)」は発売と同時に売り切れ、話題沸騰中。発売の前にも3回の予約が設けられたが、全て「瞬殺」開始と同時にほぼ完売。生産が追いつかない人気ぶりを見せている。
久々の大型ヒットの予感に業界もお祭り気分だが、よく考えてみよう。「10兆円市場」といえばコンビニ全体の売上高と同規模だ。そんな巨大な市場が本当にゲーム産業から生まれようとしているのだろうか? もしそうだとすれば、「ゲーム」の枠に留まらない何か凄い起爆力が潜んでいる? 取材はまず、「PS VR」を実体験することからスタートした。