世界中を飛び回り、取材し続けてきた国際ジャーナリストの父・落合信彦氏と、最先端の研究者として世界から注目されているメディアアーティストの息子・落合陽一氏。
29歳の若さにして筑波大学助教を務める息子は、父に勧められ、幼い頃よりニーチェからカミュ、キルケゴールまで哲学や文学、歴史の古典に親しみ育った。そして、父とは畑違いの分野で世界的な才能を発揮している。父は、常に世界の現場からリアルな人々の姿、リアルな国の姿をレポートし続け、その著作は最新刊『そして、アメリカは消える』に至るまで130冊以上に及ぶ。
この2人の目に、未来はどう映っているのか。史上初の親子対談──。
落合信彦:安倍政権は、「働き方改革」を掲げて「配偶者控除廃止」を打ち出していた。それが、世論の反発で立ち消えになった。要するに国の将来など考えていなくて、その折々で国民にウケそうなことを言っているだけなんだ。結局はポピュリズムだよ。
ジョン・F・ケネディや、弟のロバート・ケネディは、常に「自由とは何か」「人間とはどうあるべきか」を考え、国民に語っていた。そうした大局に立った言葉を語れる政治家はいなくなってしまった。
落合陽一:自由とか人権とか、みんな興味がなくなってしまったんだよね。それよりも多くの人にとっては「iPhone7」のほうが重要になった。いまや、教養を含んだ言葉というのは国民には届かないんだ。ポピュリズムな生活を送る人に届くのは、「愛国心」くらい。
信彦:安倍は『美しい国へ』という本を出していたよな。あれもポピュリズムだった。
陽一:「美しい日本」って、トランプのスローガンの“Make America Great Again”とまったく同じだよね。安倍さんとトランプは同じポピュリズムの使い方をしている(笑)。
信彦:日本の政界も本当に劣化した。自民党を見ても将来の日本を託せるリーダーにふさわしい人材はいないし、民進党はもっと酷い。
日本の政治屋も、みんなカネのことばかり考えている。アメリカに比べるとスケールが小さい、セコい話ばかりだが……。例えば12人が辞任した富山市議会を見ても、数百万円のカネに目が眩んで魂を売るような者ばかりだった。
東京都議会もカネと利権のことしか考えない「政治屋集団」だな。東京オリンピックは、利権政治屋たちの喰い物にされている。都知事の小池百合子が利権屋たちとどこまで戦えるか、注目だろう。