11月14日に茨城県つくば市で、15日に愛知県知多市で、16日に千葉県栄町で、さらに20日には福岡県で2件と、高齢ドライバーによる事故は後を絶たない。
10月28日には、横浜市で軽トラックが小学生の集団登校の列に突っ込み、小学1年生の男児1人が犠牲になった。ドライバーの87歳男性は認知症の発症を疑われている。
こうした高齢ドライバーによる事故を防ごうと、国や自治体、メディアが一体となって65歳を超えた高齢者の「免許自主返納」を盛んに促す状況が続いている。
来年3月に施行される改正道路交通法では、75歳以上の免許更新時の認知症検査体制が強化される。11月15日に開かれた政府の関係閣僚会議でも、この改正道路交通法の円滑な施行に万全を期すとともに、事故防止の対策を積極的に講じるよう指示が出された。
◆運転は“脳トレ”
だが、こうした動きのなかで、語られていない側面がある。それは「免許返納に伴う高齢者の健康リスク」だ。山梨大学大学院総合研究部の伊藤安海・准教授がいう。
「自動車の運転は相当な刺激を脳に与える、いわば“脳トレ”になっています。ハンドルを操作するときは道や歩行者の状況など、短い時間内に多くの情報を処理・判断して動かなければならない。一つ判断を間違えると事故を起こしてしまう恐れがあるので、脳をフル回転させている。
実際にドライビングシミュレータ運転中の脳の活性度を計測してみると、80代の方でも運転中には若い年齢の人と同じくらいに活性度が上がっている場合が多く見受けられます。そうした“脳トレ”の習慣を急にやめてしまうと、一気に認知能力が落ちる危険性があるのです」
また、運転をやめることで買い物や病院通い、友人に会うといった行動が一気に減ると、同様に脳の機能を低下させる恐れがあると伊藤氏は続ける。