スポーツ

野人・岡野雅行氏 J3ガイナーレ鳥取で営業職に専念する理由

チュウブYAJINスタジアムには現役時代のパネルも

 日本で開催されたサッカーのクラブ世界一を決めるクラブ・ワールドカップ(W杯)。国内Jリーグ覇者の鹿島アントラーズが欧州王者のレアル・マドリードに善戦し、華々しく話題をさらったが、この大会期間中、山陰地方にある日本一小さな県のサッカークラブでは、チームの再起を誓って闘志を剥き出しにする「野人」の姿があった。

 ガイナーレ鳥取GM(ゼネラルマネジャー)の岡野雅行氏(44)──言わずと知れた元日本代表。1998年のW杯フランス大会アジア予選で、自ら日本を初出場に導く決勝ゴールをたたき込み、一躍スターに。特徴的な長髪のヘアスタイル、驚異的な俊足を活かしたプレースタイルも重なり、浦和レッズ時代につけられた野人のニックネームを定着させた。

「もう鳥取に来て7年も経つのに、いまだに『旅行ですか?』とか、『東京から通っているんでしょ?』なんて言われるんです。ちゃんと家族で鳥取に移り住み、税金も払っているのに。この前はコンビニで、主婦から『あっ、あの人ですよね……野蛮人さん』って(笑い)」

 岡野氏が現役生活に終止符を打ったのは、2013年。浦和レッズ、ヴィッセル神戸、香港のTSWペガサスなどを渡り歩き、2009年よりガイナーレ鳥取に移籍。当時JFLだった名もなきチームで4年間選手として在籍した。

「鳥取って、東京の世田谷区よりも人口が少ないんですよ。そんな県にプロのサッカークラブがあること自体が奇跡でしたが、小さいながらも地元の企業やファンの方々の温かい応援があって、雰囲気がとてもいい。フロントも運営スタッフも手弁当で試合の設営をするなど一生懸命でしたしね。

 でも、突然Jリーグに下位リーグができてガイナーレがJ3に降格してしまったんです。ちょうどW杯ブラジル大会が始まる前で、僕は解説のオファーも来ていたので引退して東京に帰ろうと思っていたのですが、塚野(真樹社長)から『何とかチームに残って力を貸してほしい』と。

 確かに解説の仕事なんていつでもできるし、鳥取にはビッグクラブにはない結束力がある。チームも弱小で苦しい経営も強いられていましたが、逆にこれ以上落ちることはなく、たくさんの可能性を秘めている。だから、GMの仕事を引き受けることにしたのです」

 とはいえ、「僕がスーツ姿で名刺交換するなんて考えてもみなかった」と振り返るように、GM就任後の岡野氏の肩には幾多の重責がのしかかった。慣れないスポンサー回りに加え、監督選びや選手の補強などチーム強化も兼任。体がいくつあっても足りないほど多忙を極めることとなった。

 2012年12月には、米子市内にニックネームを冠した自前の「チュウブYAJINスタジアム」が完成。また、岡野氏が漁師に扮して全国からチーム強化の寄付金を募り、地元の海産物や洋菓子などの特産品を贈る、ふるさと納税的な「野人プロジェクト」は、第6弾を数えるまでになった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン