日本のアニメ映画はテレビシリーズの劇場版という性格が強いため、作品やキャラクターはクローズアップされるものの、監督に注目が集まる機会は一部に限られていた。ところが、2016年に『君の名は。』(新海誠監督)、『聲の形』(山田尚子監督)、『この世界の片隅に』(片渕須直監督)と、それぞれの作家性が色濃い作品の大ヒットによって、様子が変わりつつある。
監督の名前で作品選びする際にオススメの監督、これから楽しみな監督について、アニメ評論家の藤津亮太さんにきいた。
「細田守監督については、もう別格だと思っています。まだ発表されていませんが、いつものペースなら2018年が新作発表の時期。どんな作品であっても、細田監督ならオススメします」
これまで公開されてきた細田作品を振り返ると、『時をかける少女』(2006年)、『サマーウォーズ』(2009年)、『おおかみこどもの雨と雪』(2012年)、『バケモノの子』(2015年)と、およそ3年に一作のペースで公開されている。前作から2年が経とうとしている2017年には少なくとも、なんらかの動きがありそうだ。
出自こそ東映アニメーションでテレビ作品に携わってきた細田監督だが、現在ではオリジナル作品の制作にこだわっている。見るならオリジナル作品を、というこだわりもいいが、日本のアニメーション産業はテレビ向け作品を中心に発達してきたため、公開されるアニメ映画のうち、オリジナル作品は数えるほどしかない。
とはいえ、テレビシリーズの人気を引き継ぐアニメ映画には、将来有望な若手が監督として携わることが多く、見逃せない。そのなかで藤津さんが気になる人として、『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』(2月8日公開)の伊藤智彦監督と、ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』(3月4日公開)の高橋敦史監督の名前をあげた。
「伊藤監督は最近ではテレビアニメ『僕だけがいない街』(2016年)などのヒットメイカーですが、映画監督としては今作が初めてです。ライトノベル『ソードアート・オンライン』原作のテレビシリーズも監督していましたが、キャラクターの魅力と、ドラマをじっくりみせることをうまく両立させていました。それが劇場版になってスケールが大きくなるなかで、どんなバランスの作品になるのか楽しみにしています。
高橋監督は、『青の祓魔師―劇場版―』(2012年)に続いて今回が劇場映画監督としては2作目になります。前作では、凝った背景美術を使って、、”本当にその世界が実在しそうな雰囲気”を大きなスクリーンで実現させていました。ドラえもんを描くにあたって、そういうスタイルをどれぐらい引き継ぐのか。。また、今回のドラえもん映画は過去の映画のリメイクではなくオリジナル作品です。新しいドラえもんの魅力を引き出してくれるのではと期待しています」(藤津さん)