トランプ政権誕生によって最も影響を受ける国は台湾かもしれない。台湾の李登輝元総統は日本にアジアのリーダーとしての自覚を促す。
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東西冷戦に勝利後、米国が単独覇権国家として世界に君臨するというパラダイムは、2001年の同時多発テロによって崩壊した。テロは米国の金融面にも衝撃を与え、低迷を続けた米国経済は、2008年のリーマン・ショックによって決定的な打撃を受ける。経済力の低迷は軍事面にも影響を及ぼし、もはや米国単独で世界を引っ張っていく力がなくなったのだ。
ところが、この金融危機によって先進国と呼ばれる国々も力を失い、かわって中国、インド、ブラジルなど経済成長の著しい新興国の発言力が強くなってきた。そして、これらの新興国が加わって、ついにG20が国際情勢について議論を戦わせるようになっていく。
こうした国際秩序の多様化は、米国のかわりにグローバルなリーダーシップを引き受ける能力と経済力を持つ国、もしくは組織がなくなったということを表している。主導的役割を果たす国家の不在、つまりそれまでのパラダイムが崩壊したとも言えるだろう。
米国の政治学者イアン・ブレマー氏は、これを「Gゼロ」の世界と呼んだ。私に言わせれば、まさに戦国時代の到来である。
トランプ氏の米国第一主義は、それだけ米国が国際社会に関与する余裕がなくなっていることの裏返しとも言える。こうした時代に、日本はいかに対処していくべきだろうか。
まず言えるのは、米国との関係を平等な、対等な立場に改めることだ。これまでの日米関係は、日本側にとっては「米国に守ってもらおう」というような態度が戦後長く続いたように思える。
安倍晋三首相が、集団的自衛権の行使を認め、国際社会における日本の責任を果たせるように整備したことに見られるように、日本自身が安全保障に積極的に関与することで、より密接で、対等な日米同盟を築き上げていかなくてはならない。そして、米国との間で、率直な対話に基づく対等なパートナーシップを築くことを考えるべきだ。日米関係の重要さを前提としつつ、日米同盟のあり方をいまこそ根本的に考え直す必要がある。
さらに今後は、日米同盟をいかに運用していくか、日本がどのような役割を担うべきかが、改めて問われることになっていくだろう。