「フォークボールの神様」と呼ばれた杉下茂氏は、昨年も11月27日の中日OB会に始まり各種表彰式など、4日連続で球界イベントに参加。口を開けば、ダルビッシュ有ら現役からOBまで球史を彩った投手たちへの論評が止まらない──。91歳の杉下氏に、本物のフォークボール誕生秘話と、いま注目しているピッチャーについて聞いた。
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90歳になっても何も変わらないですよ。“とうとう90歳になっちゃった”ぐらいのもので、とくに感慨深いことはありません。
今、月に2~3回はゴルフをしています。ゴルフ場で「杉下さんの歳までゴルフをすることが目標です」と知らない人からいわれます。どのようなことでも人の目標になれるのは嬉しいことですね。エイジシュートだってできるといいたいところですが、ゴルフは甘くありません。
あと、この歳になると信託銀行などから、「財産をお子さんに分けますか」なんて電話がしょっちゅうあってうるさいのが困る(苦笑)。
僕がフォークボールを学んだのは、明治大学2年の冬です。野球部の技術顧問だった天知俊一さんがアメリカに遠征して、向こうのピッチャーに投げ方を教わって帰ってきた。天知さんは明大の野球部員みんなに伝授したけれど、使いこなせたのは僕だけでした。それで21歳にして投手に転向したんです。
本物のフォークは指の間にボールを挟んで、指から抜くような感覚で投げます。すると球が回転せず、蝶が舞うように左右にゆらゆら揺れながら落ちる。僕のフォークはどこに行くかわからないうえ、揺れながら三段階で落ちました。
僕の現役時代はストレート、カーブ、ナックルの3種類しか球種は存在しないといわれていました。ナックルも回転しないボールですが、“フォークはナックルの一種だ”と教えられました。今は球種が増えて複雑になりすぎましたね。