「現在の医療技術では治せない病気も、治せるようになる日が来るはず」──未来にそんな希望を託す「人体冷凍保存(クライオニクス)」が注目されている。少しずつ利用者を増やしている冷凍保存の実態に迫った。
登録会員が亡くなると、遺体引き取りチームが急行し、遺体を冷却しながら拠点に搬送する。そして、遺体の大腿部付け根の大動脈から不凍液を流し込んで血液と入れ替える。血液(水分)を凍結・解凍すると、氷の結晶が細胞を破壊するため、不凍液に入れ替えるのだという。
その後、全身保存の場合は液体窒素を充たした金属製容器に遺体を入れる。頭部保存の場合は頭部を切断して液体窒素に沈める。目覚めるのは、50年後か200年後か。
人体冷凍保存(クライオニクス)は、遺体をマイナス196℃まで冷やし、医療の発達した未来で適切な処置をして蘇らせようとする極低温保存技術だ。
まるでSF映画のような話だが、すでにアメリカのアルコー延命財団とクライオニクス研究所、ロシア・クリオロス社で人体冷凍保存サービスが始められている。推計で世界には現在200体以上が保存されている。
アルコーの場合、全身を保存する方法と頭部のみを保存する方法の2通りある。費用は、全身で約15万ドル(約1760万円)、頭部のみで約8万ドル(約940万円)だ。その半分は財団の基金に回り、その運用益は保存された遺体の維持管理費に充てられている。米・大リーグの名選手テッド・ウィリアムズの遺体もアルコーで保存されている。
登録会員には、がんや難病の患者のほか、「遠い未来を自分の目で見たい」という人もいるという。