テレビ東京の看板番組『開運!なんでも鑑定団』(火曜夜8時54分~)に思わぬ大騒動が持ち上がった。昨年12月20日の放送で、世界に3点しかないとされる中国の陶器「曜変天目茶碗」の“4点目”が見つかったとされたが、窯業で知られる愛知県瀬戸市在住の陶芸家・九代目長江惣吉氏は、「番組を見ていて思わず絶句しました。どう見ても中国の商店街で売っているまがい物にしか見えなかった」と異議を唱えている。鑑定品は色合いから見て、18世紀以降に作られたものだと長江氏は推測する。
さらには、中国陶磁考古学・陶磁史の世界的権威で沖縄県立芸術大学教授の森達也氏も「実物を見ていないのでその点は不正確ですが、映像を見た限りでは本物である可能性は低い」と話す。
日本だけでなく、本場・中国からも異論が出ている。長江氏のもとには、番組を視聴した中国人研究者・孫建興氏からこんなメールが届いた。
〈是偽曜変 是現代焼制的(=これは偽物の曜変だ。現代に焼かれたものだ)〉
「メールをくれた孫氏は、曜変の再現技術で中国国家から日本でいう人間国宝(無形文化遺産伝承人)に認定された研究者。同じく著名な研究家で、曜変天目についての著作がある謝道華氏からも、“これは偽物だ。建陽市の骨董街で数百元(数千円)で売っている”とのメールが届いた」(長江氏)
番組では、茶碗に2500万円の値がつけられ「国宝になっていたかもしれない大名品です!」と宣言されたが、この額にも長江氏は首を傾げる。
「本当に4点目の曜変天目であるなら2500万円は安すぎます。国宝並みという評価と値段が釣り合っていません」
仮に本物だとしたら、どのくらいの値付けが妥当なのか。
本誌が2大オークションサイトであるサザビーズとクリスティーズに聞くと、これまで現存する3つの曜変天目は国宝に指定されているため出品された記録はないが、ワンランク下とされる「油滴天目茶碗」は昨年、それぞれ1品ずつ出品されていたという。
落札額は「108万5000ポンド(約1億5000万円)(サザビーズ)、「1170万ドル(約12億円)」(クリスティーズ・ジャパン)と、どちらも今回の鑑定結果を大きく上回る。