俳優・松方弘樹さん、死去──。そのニュースが駆け巡った1月23日夕方、ビートたけしは『世界まる見え!テレビ特捜部』(日本テレビ系)の収録中だった。その後、スタジオ内のたけしの楽屋にて、本誌・週刊ポスト連載の取材が行なわれることになっていた。
収録終了。お馴染みの仮装を脱ぎ、楽屋のソファに座ったたけしに記者は告げた。「松方弘樹さんが亡くなりました……」──たけしは驚きの表情を浮かべ、絶句した。20秒近く沈黙があっただろうか。
「そういや、『元気が出るテレビ!!』も、このスタジオで撮ってたんだよ」と、ポツリつぶやいた──。最新刊『テレビじゃ言えない』も話題となっているたけしが、テレビでは言えなかった松方さんとの思い出を語る。
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松方さんと初めて会ったのは、『元気が出るテレビ!!』の企画が持ち上がった頃だったね。キャスティングを考えていたら、当時、制作会社IVSのディレクターだったテリー伊藤が「松方さん、いいんじゃないですかね~」なんていうんだよな。
当時の松方さんは『仁義なき戦い』やら東映の実録ヤクザ映画のイメージがバリバリにある頃でさ。
だからオイラは最初、「大丈夫かい? おっかないんじゃないの?」「バラエティなんてガラじゃないだろ」って、首を傾げたんだよな。
じゃあ実際会ってみましょうよってことで、四谷の寿司屋でメシを食う流れになったんだ。日テレの人とテリー伊藤と3人で店に入ると、松方さんが先に来て待っててさ。もう、ヤクザ顔負けの迫力で、ギラッとこっちを睨むんだよ。
だけど「やべえな」と思ったのは最初だけ。酒をガンガン飲んでると、あの人が「ゲラ」だってわかったんだよ。
「ゲラ」ってのは、「ゲラゲラすぐ笑う人」って意味の業界用語でね。あの「イーヒ、ヒ、ヒ」って笑い声も特徴的だろ。「これはハマるぞ」って思ったんだよな。
なんで、その場で「毎週なんですけど、レギュラーで出てもらえます?」って聞いたんだよ。そしたらニコッとOKしてくれてさ。
松方さんは、京都と東京を往復したり大変だったんじゃないかと思うけど、結局『元気が出るテレビ!!』では、10年以上も付き合うことになっちゃった。