山口組の分裂抗争は度重なる武力衝突から一時、落ち着きを見せていた。しかし、今年1月、意外な形で火が噴いた。場所は京都、しかも山口組傘下ではない独立団体を舞台にして、両団体の「代理戦争」が勃発したのだ。フリーライターの鈴木智彦氏がレポートする。
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1月21日午前6時、京都市左京区にある会津小鉄会傘下のいろは会事務所前に向かった。静かに降り始めた雨が雪に変わっていた。玄関前にはすでに京都府警が大挙しており、実話誌の記者が2人張っている。周囲が明るくなった頃には地元メディアや一般誌、警視庁や兵庫県警などの捜査関係者なども現われ、周辺はちょっとした騒ぎになった。
騒動の発端は1月10日、会津小鉄会と親交のある暴力団に送られたFAXだ。六代目会津小鉄会・馬場美次会長の名前と印が押されており、そこには、
「この度、後進に道を譲るべく、原田昇(六代目会津小鉄会の若頭)をもって七代目会津小鉄会会長とし、不詳私の跡目とすることと決定いたしました」
と書かれていた。馬場会長は家族の銀行口座を使ったことが詐欺事件とされ、昨年12月に有罪判決を受けている。今後収監される可能性に加え、75歳という高齢ということもあって代目が変わってもおかしくない。
が、すぐに馬場会長の直筆サイン入りで訂正のFAXが流された。
「本日、ファックスにて送信致しました書状について、後継者に原田昇となっておりますが、まったく私の知る所ではございません。ここに改めて御通知申し上げます。依って原田昇を『絶縁』と致します」
先ほど七代目会長を襲名するとされた原田若頭が、今度は一転、絶縁処分とされてしまったのだ。直後、騒動はどんどん大きくなる。