毎月最終金曜日は、国や経済界がお墨付きを与えた“花金”になる。サラリーマンは午後3時に仕事を切り上げ、買い物に旅行に趣味にとお金を使ってもらい消費を喚起しようというのだ。しかし、これまでもフレックスタイム制の導入で、柔軟な働き方を認めてきた企業現場においては、さまざまな弊害も起きてきた。
さて、安倍首相も後押しする今回の「プレミアムフライデー」は成功するのか。人事ジャーナリストの溝上憲文氏がレポートする。
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2月24日に第1回目を迎える「プレミアムフライデー」(月末の金曜日)実施を前に経済界が盛り上がっている。
経済産業省が音頭で、「3時に終業し、ちょっと豊かな時間を過ごしませんか」というイベントだが、同省にロゴマークの使用を申請した参加企業は2000社を超える。その多くは百貨店、飲食、旅行業などサービス・小売業が中心だ。
プレミアムフライデーはいうまでもなく消費喚起策。これを機会に売上げを伸ばそうという商魂はわかるのだが、肝心の消費者である会社員の3時終業に向けた動きは一向に盛り上がってはいない。
経団連も趣旨に賛同し、榊原定征会長名でプレミアムフライデー実施期間中の柔軟な働き方の推進を呼びかけている。だが、電子部品メーカーの人事課長は、
「人事としてこの日に早く帰れとか、指図するつもりはない。3時終業に強制力はないし、企業の自由意志のはず。とくにうちは営業を含めて月末の金曜日は忙しい」
とにべもない。DeNAトラベルが実施したアンケート調査(2017年1月)でも勤務先がプレミアムフライデーを導入する予定はないと回答した人が55%。導入済み・導入予定の計2.2%を大きく上回っている。
そもそも、プレミアムフライデーに併せて月末金曜日の「3時終業」を制度化するのは至難の業だ。
所定労働時間が8時間の会社の場合、9時始業なら昼の休憩時間を挟んで終業時刻は午後6時。それを月末金曜日を3時終業にすると所定労働時間を3時間減らさないといけない。月間の所定労働日で換算すると1日平均10分弱の時短になる。
電機メーカーの人事担当者は「所定労働時間の変更は労働組合との協議が必要になるが、時短分の出費やその後の割増残業代を考えると経営者がウンとは言わないだろう」と語る。
実際にプレミアムフライデー実施企業も所定労働時間の時短をするところはない。住友商事は当日を全休・午後半休取得奨励日としている。つまり、自分の有給休暇を使ってくださいということだ。有休取得の半日取得を認めている企業はプレミアムフライデーに半日休暇取得推進がやりやすいだろう。
ソフトバンクは3時退社を奨励し、4月からコアタイムなしのフレックス勤務制度に変更する。これは要するに1日の出退勤時間は自由だが、1か月間の総所定労働時間分は働きなさいという制度だ。いずれにしても有休取得やフレックス勤務を使った3時退社に強制力はなく、社員の自由意志に任せる“奨励”にすぎない。
これにやや強制力を持たせたのが大和ハウス工業だ。同社の所定労働時間は9時始業、18時終業の8時間。プレミアムフライデー当日は8時始業、終業を17時にして、午前中4時間働き、午後は半日有休を実施するというものだ。半日有休が通常の有給休暇の取得なのか、特別休暇を付与するものなのかわからないが、いわゆる“朝型勤務”の導入である。
これで思い出すのが昨年7月に国家公務員に導入された「ゆう活」の失敗だ。始業時間を早めて夕方早めに切り上げて残業を減らそうという制度だったが、結局始業時間を早めた職員の2割以上が午後8時まで残業していた。
また、厚生労働大臣が経団連に経済界として朝方勤務の導入を図るように要請したことをきっかけに民間企業でも朝型勤務を導入する企業が増えた。だが、導入しても延々と残業する社員も増えるのではないかという声も人事関係者の中で上がっていた。実際に社内が混乱した企業もあった。