キャリア官僚とは、本当に優秀な人材なのだろうか? 経営コンサルタントの大前研一氏は、彼らを20代当時の学力評価だけで能力を測るのは間違いだと指摘している。中央省庁や地方の役所と、民間企業との人材の流動性を高めるべきだという大前氏が、「カイゼン」可能な役所の生産性について解説する。
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人事院がまとめた「諸外国の国家公務員制度の概要」によると、たとえば、ドイツの国家公務員の再就職に関する規制は「退職後5年以内(定年退職した場合は3年以内)に、退職前5年間の職務と関係のある企業に就職する場合は、在職した省に届け出なければならない。省の業務と利害対立が生ずるおそれがある場合は、再就職は認められない」となっている。
私は、これに年齢制限を組み合わせ、大きな権限を持つようになる40代以上の幹部にはドイツと同じような原則を徹底させるとともに、30代までは関連企業への天下りや出向を自由にしてもよいと思う。また、定年後に利権を土産に天下りするのではなく、若い頃から民間企業に出向してグローバル事業や商品計画などの経験をするなら意味がある。それは国家の運営でも必要なスキルだからだ。
その一方で、天下りとは逆に、民間企業から中央省庁や地方の役所への転職=「天上り」を可能にしたらどうなるかと考えてみよう。
そもそも官庁では、民間企業では当たり前の業績評価(成果評価)をしていない。生産性やノルマの目標などもない。だから組織は贅肉だらけである。たとえば、企業で事業計画を手がけていた人間なら、今の役所のような単年度主義のバカげた予算は作らない。中長期の事業計画とその評価は絶対に必要だが、役人にそうした発想は微塵もない。