日本で「死に方」の議論が過熱している。これまでタブー視されてきた「安楽死」の“解禁論”も叫ばれ始めた。作家・筒井康隆氏(82)が、月刊誌『SAPIO』(小学館刊)に寄稿した論考「日本でも早く安楽死法を通してもらうしかない」(2017年2月号)も大きな反響を呼んだ。この論考に注目した、日本尊厳死協会副理事長の長尾和宏医師(58)の要望で、終末期医療と尊厳死、安楽死を巡る二人の対談が実現した。
長尾:医者から酒やタバコをやめろといわれませんか。
筒井:しょっちゅういわれています。だけど、やめると死にますので(笑い)。タバコは鎮静の役にも立つ。酒は興奮する場合もあるし、鎮静にもなりますが、どちらかというと夜中に興奮してしまう。アイデアがもう、雲のごとく湧き出して興奮して眠れなくなる。
長尾:アイデアが出たら、小説にしないのですか?
筒井:それが、よく考えてみたら、以前書いたアイデアばっかりなの。だいたい何でも書いてるから。
長尾:いかに昔の自分はすごかったか。
筒井:すごかった(笑い)。いまごろ昔の作品読んで、ツイッターで騒いでる人がいる。もっと早く騒いでくれよ。
長尾:先生は『モナドの領域』を“最後の長篇”として発表されましたが、もう長篇は書かれませんか?
筒井:ええ、あれが最後の長篇です。みんな「書け書け」というんですが、そういう人たちには、「いまは僕の作品を読むより、ニュースを見てるほうが面白いぞ」といってます。
長尾:確かに、トランプ大統領就任、森友学園騒動、金正男の暗殺など、いろいろなことが起きていますね。
筒井:全世界的に。ロバート・A・ハインラインの短篇に『大当たりの年』という作品があるんです。主人公は統計分析のコンサルタントで、ある日、目の前で若い女の子が突然、裸になっちゃう。それを皮切りに、次々に世界中で異常な事件が起きる。主人公は、統計分析でさまざまな周期の波が重なり合って、異常なことが集中する「大当たりの年」が来たことに気づくという話です。
もしかしたら、いまの世界は大当たりの年に近づいているのかもしれない。