2003年度に全国に2万880店あった書店は2016年度には1万4098店とわずか十数年で約3割も減った。毎年500店以上が閉店し、昨年も668店舗が姿を消した。今や書店が1つもない市町村が全国に332もある(日本書籍出版協会資料・2015年5月時点)。
なぜ書店がこんなにも減っているのか。文化庁が16才以上の男女を対象に行った調査では「1か月に本を1冊も読まない」と答えた人が47.5%(2013年度)。2002年度の37.6%から10%近くも増加した。
今年2月に発表された全国大学生活協同組合連合会(東京)の調査でも「1日の読書時間ゼロ」と答えた大学生が約5割にのぼった。学生時代はいちばん本が読める時期なのに――と思うのは、昔の感覚なのだろうか。
3月8日付の朝日新聞に、21才の大学生からのこんな投書が掲載された。
《本を読まないのは良くないと言えるのだろうか。(中略)もし、読書をしなければいけない確固たる理由があるならば教えて頂きたい》
これに対するさまざまな意見が、4月5日付朝日新聞の「声」欄に寄せられた。
《私も時間を削ってまで読書する必要はないと思う。なぜなら、効率が悪いからだ。(中略)読書を押しつけるのは、運動が苦手な人にスポーツを押しつけるのと同じである。楽器が弾けない人に、今すぐ弾けと言っているのと同じだ》(14才・中学生)
《現実に出会った人よりは、本で出会った人がはるかに多いのです。いかにたくさんの人と出会うか、それが読書なのだと思います》(64才)
『まちの本屋』(ポプラ社)の著書がある岩手県盛岡市のさわや書店フェザン店の田口幹人店長は、こんな経験をしたことがあると話す。
「ある年配の女性のお客さまがレジにお見えになって、涙を流されるのです。“どうかされましたか?”と声をおかけすると、バッグから1冊の本を取り出されました。それは震災関連の本でした。震災でご主人とご子息を亡くされて、途方に暮れていた時にうちの店のパネルに目が行き、そこに書かれていることが自分の境遇と重なり、その本を買われたそうです。“もう何度、この本を読んだか”と。そして、その本によって自分は救われた、自分を取り戻すことができたと涙を流しながらおっしゃっていました。
一冊の本は、時に大きな悲しみや苦しみから人を救い、立ち直るきっかけを与えることもあるんです」(田口さん)