コラムニスト、故・山本七平氏は1977年に刊行された著書『「空気」の研究』でこう書いている。〈「空気」とはまことに大きな絶対権をもった妖怪である。一種の「超能力」かも知れない〉
この妖怪は厄介だ。なにしろ、空気が読めなければ「KY(空気が読めない)」と呼ばれてコミュニティから排除されてしまう。けれども、ひとたび「空気」を味方につければ、どんなにスキャンダルが出ようとも、政治が不公平でも、政権は批判を浴びない。そればかりか、批判者の方が批判されるという不思議な現象が起きる。
いま、日本社会に不思議な現象が続いている。大臣の失言が続いても、森友学園問題やや加計学園問題で批判を浴びても、なぜか安倍内閣の支持率は下がらない。逆に“告発者”である森友の籠池泰典・前理事長、前川喜平・文科省前次官らが大メディアであたかも“ヘンな人”であるかのように扱われている。どうやら安倍首相は「空気という妖怪」を手なずけているらしい。
10年前に「KY総理」と呼ばれ、「空気」に押し潰されて総理の椅子を放り出した安倍晋三首相が、どのような「空気の研究」を行ない、味方につけることができたのか。