6月14日、ロンドンのタワーマンションで大規模な火災が発生した。多くのメディアで報道されたので、あの衝撃の映像を見た人も多いはずだ。当然「日本でも同じことが起こるのでは?」という疑問も湧いてくる。
テレビの情報番組などで防災や建築の専門家が解説していたのをご覧になった方はそれなりに納得されたと思うが、日本では建築基準法や消防法などによって防火構造に関する厳しい規制が設けられている。
その規制が守られている限りにおいて、たとえタワーマンションの高層階で火災が発生したとしても、あのロンドンの建物のような激しい延焼は起こり得ない。火災はその住戸もしくはそのフロアの一画に閉じ込められることになっている。さらには、スプリンクラーも作動するはずだ。
しかし、だからといって100%安心できるわけではない。
例えば、東京近辺で直下型の大地震が発生したとしよう。激しい揺れによって火災が発生する可能性も高い。直下型の阪神淡路大震災では、同時多発的に火災が発生していた。
当然、消防隊員たちは火災現場に駆けつけてくるはずだ。しかし、優先されるのは役所や学校、病院などの公共施設だ。直下型地震が起きた場合、東京都内には火災が発生する公共施設は何か所くらいあるのだろうか。23区の各区で4か所ずつ起こっても92か所になってしまう。この他に都下の市町村がある。
タワーマンションは分譲と賃貸を合わせて首都圏だけでも30万戸に迫っている。1棟250戸とすると約1200棟。その5%で火災が発生すると60か所。そのほとんどが東京だと推定できる。
当たり前だが、火災が発生するのはタワーマンションだけではない。板状型マンションや戸建て、木造アパート、オフィスビルでも火災が発生する。最悪の場合、東京の23区だけで同時に数百か所の火災が発生するかもしれない。
東京都消防庁に所属する消防隊員は約1万8500名。地震時には死者や負傷者が多数出るから、救急救命に多くの人員が割かれる。自宅その他で休んでいる隊員を集めるにも時間がかかるだろう。さらに本部要員も必要だ。
全消防隊員の3分の1が消火活動に出動するとして約6200名。1か所に30名が向かうと想定しても、約206か所の火災現場でしか消火活動を行えないことになる。
いくらタワーマンションには厳しい規制によって延焼を防ぐ構造になっていようと、火災発生後何時間も本格的な消火活動が行われなければ、大きな火災へと発展する可能性は否定できない。