防臭、防腐、水のろ過などで古くから利用されてきた炭が持つ、高い遠赤外線効果は周知の事実。その炭の力を、職人技と商品開発力で、調理器具へと活用させた調理鍋がある。世界初の“カーボン製無水調理鍋”を生み出した町工場の、下町ロケット物語!
遡ること55年前。1962年に創業した穴織カーボンは、工業用カーボングラファイトの精密加工で実績を積んできた、ものづくり企業の町工場だ。
30年近く前、バブルの崩壊で不況に見舞われると、同社も受注が激減。そんな中、2代目社長の穴織英一さんは、昼は石焼き芋の販売、夜は居酒屋を経営する起業家と知己を得た。そして「カーボンを使えば、石で焼くよりおいしくなるかもしれませんよ!」と提案したところ、さっそく芋焼き器づくりを依頼されたという。
張り切って試作器を作ると、焼き芋の素晴らしい焼き上がりに大満足された。すると次は、居酒屋の人気メニューである釜飯用の羽釜の製作を依頼される。穴織さんは、自ら手掛けた試作品で炊いた釜飯の味に驚愕する。ふっくらと炊けたお米は、これまでの炊飯器で炊いたものとはまったくの別物。艶や甘み、うまみが凝縮された極上の味だった。