「末期がんが消えた!」「先進的」──命の危機に瀕した進行がん患者にとって、そうした謳い文句で宣伝される「がん免疫療法」は“最後の希望”に映る。だが、高額な治療費を払う患者たちに、「有効性が立証されていない」ことが、正確に伝わっているのか。
国立がん研究センター・前理事長の堀田知光氏は、筆者のインタビューに応じ、民間の免疫療法を厳しく批判した。
「正直に申し上げると、胡散臭いという印象。結果が良いというけれど、科学的な根拠を示していない。
有効性と安全性が検証されていない、再現性もない免疫療法が“商売”として行われているのは問題ですよ。私は今の“古典的免疫療法”に大きな期待はしていません」
無料説明会などに参加する患者や家族には聞かされない、これが本当の専門家の見地だ。1クール(約3か月)で200~400万円もするという高額な「がん免疫細胞療法」に誘導する巧妙な手口。その代表的なものを挙げる。
◆症例画像の偽装
クリニックのHPなどに必ず掲載されているのが、治療前後を比較した症例画像。これに関して、27年のキャリアを持つ腫瘍内科医・五月女隆医師は──
「CT画像の撮影条件やスライス位置を少しずらして、がんが小さくなったり、消えたように見せているクリニックがある。それに免疫療法と抗がん剤を併用しているのに、すべて免疫療法の効果であるように記載しています。まともな医療機関では、症例画像を広告に使いません」