ライフ

金正恩モデル小説書いた作家「日本人の危機意識いびつ」と指摘

『独裁者ですが、なにか?』を上梓した荒木源氏

 北朝鮮のミサイル発射をめぐって緊張が高まる中、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長を思わせる男が主人公の小説『独裁者ですが、なにか?』(小学館文庫)が出版された。「現実とのリンクを意識した」という著者の荒木源氏は、「日本人の危機意識のいびつさ」も指摘する。

 * * *
「ジョンウィン」と名付けられたこの主人公、特徴的なへスタイルや太鼓腹の外見だけでなく、独裁国家「ペックランド」最高指導者としての言動も、伝えられる“本人”のそれを彷彿させる。

 本の帯に「緊急出版」と謳われている通り、ストーリーには最近のニュースが取り込まれた。ジョンウィンが敵対国の大統領・タンプルと繰り広げる非難合戦など、グアムに向けたミサイル発射計画をめぐって現実にあった、北朝鮮・アメリカ間のやりとりを想起させずにおかない。

 ただ小説では、グアムではなく、日本とおぼしい「ヤップランド」の近海にミサイルの照準が合わせられる。その顛末が、ペックランド内部の動きとともに綴られてゆくのである。

 原稿が書き始められたのは6月半ばだったが、その後も北朝鮮はミサイルがらみの挑発行動をエスカレートさせ、情勢が切迫する。「せきたてられる気分で」、荒木氏は2カ月足らずのうちに小説を完成させた。途中で、小説と現実が追いかけっこをしているみたいに感じたこともあったという。

「ジョンウィンは、ヤップランドの沖合30キロに向けてのミサイル発射を命じます。領海のギリギリ外、を狙うわけですね。そのくだりを書いてほどなく、グアムに向けた北朝鮮のミサイル発射計画が明らかになったんですが、目標が同じく陸地から30キロだっていうんです。びっくりしました」

 この小説を荒木氏が構想したもともとのきっかけは、金委員長のパーソナリティーへの関心だった。

「エキセントリックな面ばかり注目されますが、ヨーロッパに留学経験があるようだし、インターネットも使いこなすとのこと。我々とそんなに違わない感覚の持ち主じゃないかと思えてならないんです」

 と荒木氏は言う。

「実際のところどうなのかは分からないとしかいいようがありませんけれど、フィクションでなら書ける。金委員長が本音で何を思っているのか、僕なりの仮説を展開してみたかった」

 その仮説の中で、重要な役割を果たすのが「家族」である。

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン