最新の家電といえば、全自動化、機器どうしの情報がつながったIoT(モノのインターネット)、さらにはAI(人工知能)を駆使した進化が目覚ましい。だが、いざマンション内の部屋や共有スペースを見回してみると、まだまだ省力化できそうなところは多い。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、“近未来型マンション”の姿を提案する。
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先日、とある総合電機メーカーの方が、私を訪ねてこられた。その目的は、「今後のマンションに求められる設備などにつき、当社としてビジネスチャンスがあるのかどうかも含めて榊さんにお伺いしたい」ということだった。
こういう類のオファーは初めてだったが、他人の考えないことを考え、それを実行するのが大好きな私としては、楽しみながらいろいろとアイデアを出してみた。
自分で定めたコンセプトは「まだ人間が行っている作業は、すべてがフロンティア」というもの。
これまでに人間は洗濯機や掃除機を発明し、普及させることによって家事労働を著しく省力化してきた。しかし、まだ人間が作業しなければならないところも多い。そういうところこそビジネスのフロンティアになり得るのではないか、というのが今回のアイデア出しのコンセプトなのだ。
中には「それは難しいだろう」というものもある。しかし、最初から諦めてしまっては何もできない。理想は高く掲げ、一歩一歩前進していけばその内に実現するかもしれないのだ。
まず、最近はあらゆる職場で人手不足が顕在化している。マンション業界も例外ではない。深刻なのはマンションの管理人不足。人手不足によって管理サービスの中身を削らざるを得ない事例も出てきている。
◆AI機能付きの清掃ロボット
数十戸規模のマンションの場合、管理人の主な仕事は共用部の清掃とゴミ出しである。まず、この共用部の清掃をロボット化する。すでに平らな床面を掃き清めたり磨いたり、薬品を塗布するロボットはある。それらをさらに精密化して、各マンションの共用部の図面を読み込ませたAI機能付きのロボットを作れないか。
人が近づくとセンサーで感知して危険がないように停止したり、人がいないところに移動するようなプログラムも組み込んでおく。私は『スター・ウォーズ』に登場するR2D2のような可愛らしいロボットがエントランスホールをチョロチョロと動き回って床を掃除しているイメージを思い描いている。
共用部には階段もある。階段を下りながら清掃するロボットはどうだろう。こちらは角ばった箱型になりそうだ。横幅は階段の半分。人が近づくとどちらかに寄って停止。人が脇を通り抜けるとまた動き出す。各マンションの階段幅や踊り場の図面を読み込ませておいて、隅々までくまなく清掃させる。
◆自動ゴミ搬出装置(理想は住戸から直接収集車の回収場所へ)
現状、多くのマンションでは日常生活で発生したゴミは、まず住人がゴミ集積所へもっていく。そして管理人がさらにそれをゴミ収集車が回収してくれる場所まで運び出している。いずれも人が行う作業だ。
規模の大きいタワーマンション等では、各フロアにゴミ集積所があったりする。すると、そこから収集車が回収してくれるところまで運ぶのも管理人の仕事となる。この流れを何とか自動化できないものか。理想は、各住戸内にゴミの投入口があり、そこに入れると直接収集車の回収場所まで運ばれるというシステムだ。
生ごみに関しては、ディスポーザー付きマンションならこれに近いシステムが整っている。それを可燃ゴミや資源ゴミでも実現できないだろうか。実現すると「住戸内からゴミが無くなる」という理想が実現するとともに、管理人の作業負担を著しく軽減できる。筋力を使う作業が大幅に軽減されるので、女性単独の管理人も増えるだろう。