民進党議員の不倫疑惑と相次ぐ離党などもあり、一時期低支持率に喘いでいた安倍政権への風向きが大きく変わった。それを受けて9月10日、麻生太郎・副総理兼財務相は安倍晋三・首相の自宅を訪ね、早期の解散・総選挙を強く進言したという。二階俊博幹事長や、山口那津男・公明党代表も総選挙主戦論である。
だが、解散権を握る安倍首相はまだ逡巡している。
自公両党から沸き上がる解散論に政権の大番頭の菅義偉・官房長官が頑強に反対し、政権内部で麻生―菅の対立が起きているからだ。政治ジャーナリスト・藤本順一氏が指摘する。
「危機管理の責任者である菅さんは、北朝鮮情勢がこれだけ緊迫している時に解散すべきでないという筋論から反対の立場です。11月にはトランプ米大統領の来日が調整されており、『北朝鮮問題への対応を協議するために来たのに日本は選挙なんかやっているのか』と言われてしまう。麻生さんがわざわざ総理の私邸に出向いて解散を説いたのも、官邸で話をすれば菅さんに猛反対されることがわかっていたからでしょう」
安倍首相が解散をためらうもうひとつの大きな理由が憲法改正だ。解散を打てば、改憲発議に必要な現有3分の2以上の勢力(自公で323議席)を失うリスクがある。
「ここで3分の2を失えば、安倍政権下での発議どころか、今後10年以上、憲法改正はできなくなる」(自民党憲法改正推進本部メンバー)