東京モーターショーが10月27日に開幕した。今年は各自動車メーカーがこぞってガソリン車からEV(電気自動車)へのシフトを睨んだコンセプトカーの展示や、運転操作の要らない自動運転技術の最新デモなどを行い、近い将来、クルマ社会が大きく変わりそうな印象を与えている。
だが、完全EV化や無人運転の時代は本当に間もなくやってくるのだろうか──。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が、100年に1度といわれる自動車業界の変革期に一石を投じる。
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東京モーターショーの花形はもちろん完成車メーカーの打ち出す数々のショーカーなのだが、取材陣にとっては世界から集まる自動車業界関係者と気軽にコミュニケーションを取れる貴重な場でもある。
そのなかでも往々にして自動車にまつわる本音や裏話が聞けるのは、部品業界である。海外の大手部品メーカーも複数出展しているうえ、日本勢もいまやグローバルサプライヤーとしての地位はゆるぎない。
昨今、クルマは100年に1度の変革期にあると言われている。電動化の導入、自動運転やコネクティビティの実用化などテーマはいろいろ。その技術革新の多くを支えているのは、実は部品メーカーだったりする。ということで、本当に劇的な変化がすぐにでも訪れるのか、技術開発の最前線にいるエンジニアたちをはじめ、ステークホルダーの温度感をきいてみた。
まずは電動化。欧州でフランス、イギリスなどが次々とエンジン車を廃止する方針を打ち出したり、世界最大市場である中国が電動化車両の比率を一定以上にすることをメーカーに義務付けるという半ば強引とも思える手法で脱石油を図るなど、話題には事欠かない。世界各国のメディアがガソリンエンジンすらあっという間になくなるというストーリーを出している。
果たして、そういうムーブメントに対する現場の声は、至って冷静なものばかりであった。
「電動化は進む。このこと自体に間違いないでしょう。部品メーカー、とくにメガサプライヤーは求められる技術は全方位にわたってやるというのが使命ですから、もちろん研究開発はやっています。ただ、ヨーロッパが早期にエンジン車をなくし、EVに切り替えていくような方向に向かうかと言えば、ちょっと違うかなと思います」
欧州系部品メーカーの関係者は語る。
「EVシフトは今までの道路交通のエネルギー供給の仕組みを根底から覆すような大きな話で、やるとしても何十年もかかる。当然、今から社会の制度設計について真剣な議論がなされてしかるべきですが、現地でもそういう根源的な議論はほとんどされていない。今はちょっと熱に浮かされているような感じではないかと思いますね」