日馬富士暴行問題の責任を取って理事を辞任した伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)の「後釜」は誰か──それが初場所後に行なわれる理事選の一つの焦点になっている。親方9人の“弱小派閥”である伊勢ヶ濱一門は、理事1人を協会執行部に送りこむのが精一杯。つまり、伊勢ヶ濱親方の“後任理事”は「一門の利益代表者」でもある。
現役時代の「格」から言えば、歴代1位の幕内在位(107場所)、同2位となる通算勝ち星(1047勝)を誇る浅香山親方(元大関・魁皇)が浮上するが、そう簡単に“禅譲”とはならない空気が漂っている。というのも、「浅香山親方は現役時代から横綱・貴乃花にシンパシーを感じており、現在も考え方が近い」(ベテラン相撲記者)と見られているからだ。伊勢ヶ濱一門の関係者が語る。
「貴乃花親方が暴行問題を内々の示談で済ませていれば、伊勢ヶ濱親方は辞任せずに済んだ。言ってみれば、伊勢ヶ濱親方は貴乃花親方に“刺された”ようなもの。さすがに貴乃花シンパの浅香山親方を一門として推すわけにはいかないだろう」
「浅香山理事」誕生への逆風は他にもある。「伊勢ヶ濱一門で最も発言力が強い」といわれる横綱・白鵬(宮城野部屋)の存在だ。前出の一門関係者が続ける。
「日馬富士事件以降、白鵬は貴乃花親方批判を公言するようになった。すでに内弟子を抱え、将来的には親方となり、やがてはモンゴル出身初の理事長を目指そうとしているだけに、伊勢ヶ濱一門を“貴派”にすることは絶対に阻止したいと考えるはず。そうすると、モンゴル力士の兄貴分的存在の友綱親方(元関脇・旭天鵬)が次期理事候補として急浮上してくるかもしれない」