ライフ

【香山リカ氏書評】一部の者によって私物化される国・日本

『私物化される国家 支配と服従の日本政治』/中野晃一・著

【書評】『私物化される国家 支配と服従の日本政治』/中野晃一・著/角川新書/820円+税

【評者】香山リカ(精神科医)

 森友学園、加計学園の問題が浮上してから、次々に不祥事が明るみに出ている安倍政権。それでも支持率は3割前後を保ち、とくに若い男性の支持率が高いという。

 それはなぜなのか。ひとことで言えば、政治学者である著者が本書で述べる通り、安倍総理が「ポスト冷戦の新自由主義(ネオリベラリズム)グローバル化時代の保守反動の旗手」だからだろう。

 安倍政権がこだわる「日本らしい日本」などのイメージは国家主義的でいかにも復古調であるが、同時に「アベノミクス」は新自由主義的で“小さな政府”を目指しているようにも見える。それじたいが矛盾しており、また都合のよいときだけ政府が強権を発動し、困っている人には「自助の精神でなんとかして」ではいかにも無責任なのだが、それが若い層の目には、頼もしくまた新しく映って見えてしまっているのだ。

 それだけにとどまらず、さらに大きな問題はタイトルにもなっている「私物化」である。かつての保守政治家も「バラマキ」と呼ばれる利益誘導にいそしんで問題になっていたが、安倍政権下で便宜を図られたり利益を手にしたりしているのは、「『お友だち』という特権的な地位にあるごく一部の業界関係者」だけなのだ。さらに本書では、メディアにまでその「私物化」の手が伸びようとしていることが浮き彫りにされる。

関連記事

トピックス

佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
大型特番に次々と出演する明石家さんま
《大型特番の切り札で連続出演》明石家さんまの現在地 日テレ“春のキーマン”に指名、今年70歳でもオファー続く理由
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト