銀歯の材料「パラジウム」が急騰している

 ニッケル・クロム合金は極めて硬く、噛み合う歯に深刻なダメージを与える場合がある。また、金属アレルギーが起きやすく、口腔内にガルバニー電流(*注)を発生させる要因にもなる。さらに発がん性を指摘する専門家もいる。

【*注/口のなかに2種類以上の金属がある場合、唾液を介して接触して微弱な電流が流れることがある。不整脈、頭痛などの原因になるリスクがある】

 銀合金は逆に柔らかすぎて、耐久性が低い。長期間経過すると、黒ずむ場合がある。いずれも保険診療で認められている金属だが、安い以外にメリットはない。

 本来、最適な歯科用金属は金やプラチナの合金とされるが、費用が高い。そこで安いパラジウムを混ぜた代用金属の「金パラ」が、日本で独自に開発された。臨床経験が長い歯科医・坂詰和彦氏はこう指摘する。

「保険診療で認められているとはいえ、ニッケルと銀合金を使用する妥当性はないと思います。とはいえ、一般の患者が銀歯を見て、金パラ、ニッケル、銀合金の違いを見分けることはできないでしょう」

 一部の歯科医が、患者の健康を度外視してまで必死にコスト削減を図るのは、「金パラ」の価格が急上昇したことに起因している。「金パラ」で治療すればするほど赤字が膨らむという、異常事態が起きているのだ。

 パラジウムの小売相場は500円/g前後で推移していたが、1990年代後半から上昇傾向に転じる。携帯電話の部品や、自動車の排気ガスを浄化する触媒として、需要が高まったからだ。

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