なぜ俳優・仲野太賀は求められるのか? 第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞した『淵に立つ』(2016)をはじめ、『ほとりの朔子』(2013)、『海を駆ける』(2018)の3作で仲野とタッグを組んだ深田晃司監督が証言する。
「『なぜ俳優・仲野太賀は重宝されるのか?』、理由は3つあると思います。ひとつめは『演技のうまさ』。俳優に対し演技うまいねというのも失礼な話ですが、彼の芝居の何より素晴らしい点は、共演者の一挙一動を受けてごく自然とリアルな反応を返せる圧倒的な演技センス。これができる人は実は多くない。
ふたつめは、演技に対する『真剣さ』。『ほとりの朔子』では3.11の津波と放射能事故からの避難者タカシ役を太賀さんに演じてもらったのですが、撮影前のある日いきなり電話がかかってきて、『今被災地に来てます。タカシの出身地はどこですか?』と質問されました。行く前に聞いてくれればいいのにと思いながら彼の演技への真摯さに心打たれました。
3つめは、『ナイスガイ』だから。『海を駆ける』という作品で、インドネシア人の共演者たちと出会ったその日に打ち解けて仲間になっていたのには感動しました。本当に今後の活躍が楽しみですし、一緒に映画を作り続けたい俳優です」
巧みな演技力に加えて、表現に対する真剣さ、そして愛嬌を兼ね備えた仲野に死角はない。
◆取材・文/原田イチボ(HEW)