──湯澤先生は、もともとは学者になる気はなく、料理をする仕事に就きたかったとか。

 子供の頃から料理が好きで、本屋さんに行ってレシピ本を眺めるのが趣味でした。この書店は作家本位でレシピ本を集めてるなとか、ママ応援体制だなとか、勝手に分析して楽しんで。家では台所にずっといて、自分のレシピノートを作ったりもしていましたね。完全に趣味でやっていたものの、こんな知識、どこに使うんだろうと思っていたら、ああ、この本かって(笑)。

──レシピ本に込められたメッセージを分析する<レシピ本の系譜>は読みごたえがありました。小林カツ代さん、栗原はるみさん、土井善晴さん、そして、最近の「レシピ本はいらない」というアンビバレンツなレシピ本ブームや、料理系YouTubeの人気。まさに料理は社会の鏡で、料理について語りたくなります。

 YouTubeで楽しそうに料理をしている人たちを見ると、幸せな気持ちになります。中には、YouTubeの料理は「噓物」と言う人もいるようで、<プロが本物、素人は嘘物>という思考があるんだなと気づかされますが、私はそれぞれの「持ち味」でいいんじゃないかと思っています。いま、学生はみなYouTubeを見て料理をしていますし、こうした新しい動きが、21世紀の食を作っていってくれるのではないかと期待しています。

「料理はそれぞれの「持ち味」を楽しめばいいのではないかと思っています」

「YouTubeで楽しそうに料理をしている人たちを見ると、幸せな気持ちになります」

◆湯澤規子(ゆざわ・のりこ)
1974年大阪府生まれ。法政大学人間環境学部教授。筑波大学大学院歴史・人類学研究科単位取得満期退学。博士(文学)。専門は歴史地理学、農村社会学、地域経済学。著書に、『胃袋の近代 食と人びとの日常史』『7袋のポテトチップス 食べるを語る、胃袋の戦後史』『食べものがたりのすすめ 「食」から広がるワークショップ入門』『ウンコの教室 環境と社会の未来を考える』など

◆撮影/内海裕之
◆取材・文/砂田明子

関連キーワード

関連記事

トピックス

「夢みる光源氏」展を鑑賞される愛子さま
【9割賛成の調査結果も】女性天皇についての議論は膠着状態 結婚に関して身動きが取れない愛子さまが卒論に選んだ「生涯未婚の内親王」
女性セブン
勝負強さは健在のDeNA筒香嘉智(時事通信フォト)
DeNA筒香嘉智、日本復帰で即大活躍のウラにチームメイトの“粋な計らい” 主砲・牧秀悟が音頭を取った「チャラい歓迎」
週刊ポスト
『虎に翼』の公式Xより
ドラマ通が選ぶ「最高の弁護士ドラマ」ランキング 圧倒的1位は『リーガル・ハイ』、キャラクターの濃さも話の密度も圧倒的
女性セブン
羽生結弦のライバルであるチェンが衝撃論文
《羽生結弦の永遠のライバル》ネイサン・チェンが衝撃の卒業論文 題材は羽生と同じくフィギュアスケートでも視点は正反対
女性セブン
“くわまん”こと桑野信義さん
《大腸がん闘病の桑野信義》「なんでケツの穴を他人に診せなきゃいけないんだ!」戻れぬ3年前の後悔「もっと生きたい」
NEWSポストセブン
中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
中森明菜
中森明菜、6年半の沈黙を破るファンイベントは「1公演7万8430円」 会場として有力視されるジャズクラブは近藤真彦と因縁
女性セブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
撮影前には清掃員に“弟子入り”。終了後には太鼓判を押されたという(時事通信フォト)
《役所広司主演『PERFECT DAYS』でも注目》渋谷区が開催する「公衆トイレツアー」が人気、“おもてなし文化の象徴”と見立て企画が始まる
女性セブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
昨年9月にはマスクを外した素顔を公開
【恩讐を越えて…】KEIKO、裏切りを重ねた元夫・小室哲哉にラジオで突然の“ラブコール” globe再始動に膨らむ期待
女性セブン