交流戦とWBCの影響で価値が下がった?
「一昔前なら、辞退者が出てもおかしくない状況です。2007年、本拠地のフルキャストスタジアム宮城での開催とあって、楽天から田中将大や嶋基宏、山崎武司など8選手がファン投票で選出されました。中継ぎ部門の1位は松本輝でしたが、防御率6.11と不調で6月11日から二軍落ちしていました。右内転筋痛で出場を辞退していますが、不振も理由の1つと考えられていました。
1978年には本拠地・後楽園球場での開催とあって、日本ハムがファンクラブに大々的に呼びかけて8選手が選出されました。しかし、菅野光夫や古屋英夫という数字を残していない選手も選ばれたため、組織票が問題視された。世論に押され、2人は球団の判断で辞退となりました」
2003年、中日の川崎憲次郎が2年以上登板していないにも関わらず、悪意のあるファンがインターネットで投票を呼びかけたことで、先発投手部門の1位になってしまった。そのため、選出規定として「投手として5試合以上登板または10投球回以上」「野手として10試合以上出場または20打席以上」が設けられた。前述の湯浅、佐藤、梅野、ノイジーはこの基準をいずれも上回っており、問題があるわけではない。
とはいえ、“オールスター”という名にふさわしい成績を上げているか、疑問を抱くファンは少なくないはず。それでも、世論の動向を見る限り、「辞退すべき」の声は少ない。
「昭和の頃、オールスターは一流選手しか選ばれない特別な場所と考えられていました。でも、今はそのような認識が薄れている。だから、今回の不調選手の大量選出も疑問視されないのでしょう。選手もファンもオールスターに価値を求めなくなっている」
2005年に交流戦が始まり、セ・リーグとパ・リーグの戦いに特別感がなくなった。翌年からはWBCが始まり、国際舞台での真剣勝負が見られるようになったことも、オールスターが盛り上がらなくなった原因だろう。
「その2つは大きいでしょう。しかし、それ以上にオールスターが真剣勝負よりもお祭り騒ぎの場に変わっている。選手が公式戦では投げないボールを試してみたり、絶対に使わないスローボールを投げたり、いつもと違う投球フォームでファンを沸かせようとしている。古い考えかもしれませんが、夢の球宴が“余興”のような場でいいのか。昔のオールスターには“熱”があった。選手にはもっと真剣勝負でファンを惹きつけてほしいと思います」
“夢の球宴”の呼び名に相応しいオールスターになるか。