そして谷村さんの葬儀にも長男は姿を見せなかった。
「谷村さんも奥さんも、一度縁を切った息子にどのように連絡していいものかわからなくなってしまったのかもしれません。息子さんは最後まで谷村さんの病室を訪れることはなかったようです。あれだけ溺愛していた、もう40代も半ばの息子さんと、最後の最後まで関係を改善できなかったことは、谷村さんとしては悔やんでも悔やみきれないのではないでしょうか」(前出・谷村さんの友人)
谷村さんはかつて雑誌の取材にこう語っていた。
《たとえ苦しいときでも誰かがそこにいれば、にこやかに過ごし、何事もなかったかのように逝く……そんな静かな美しい死が理想なんです》
「誰か」に、最愛の息子が加わることはなかった。いま彼はどこで、父が教えてくれた歌を思い出しているのだろう。
(了)
※女性セブン2023年11月2日号