東日本大震災をきっかけに、家族や恋人、友人とのつながりを求める人が増えたといわれるが、そうした人と人との“絆”を実感させてくれると、NHK『鶴瓶の家族に乾杯』(毎週月曜午後8時~)が、いま注目を集めている。
1995年8月、笑福亭鶴瓶(59)とさだまさし(59)がふたり旅をする特別番組としてスタート。2005年4月から、毎週放送のレギュラーとなり、鶴瓶とゲストが旅人として、ゲストが行きたい町を訪れるという現在のスタイルに。すべてぶっつけ本番で、行く先々で出会った人たちとの、さまざまな交流が描かれる。
「脚色するわけではなく、皆さんが生活している場にぼくらが飛び込むわけです。家族の温かさとか、何気ない日常が見えることで、視聴者もその家族を親戚のように思えるんじゃないでしょうか」と話すのは番組チーフ・プロデューサーの佐橋陽一さん。
「旅のスタート地点だけは事前に決めますが、そこからどこに行ってどういう形の旅になるかはまったく決まっていません。出会ったかたにいざなわれるように動いたり、聞いた情報をもとに次の場所にいったり。鶴瓶さんやゲストのかたが、どの住民に声をかけるかはわれわれスタッフもわからないので、毎回、振り回されるように連れていかれます(笑い)」
出会った人との何気ない交流から、笑いや涙が生まれる。そして、その人の知人や家族へとつながっていく。まさに“絆”が番組の見どころのひとつになっている。
今年5月、被災した宮城県石巻市を訪れた放送回は、大反響を呼んだ。2009年12月に同地を訪れた回の「再会編」で、前回の訪問で出会った人が全員、無事であることが確認されたこともあり、鶴瓶とさだまさしが被災地へ向かった。
「大変やったね~」「よう助かったなぁ。生きててよかったな~」鶴瓶が声をかけ、1年半ぶりの再会を喜び合った。被災して辛い状況にありながらも、鶴瓶と話すと自然と笑顔がこぼれていく。鶴瓶は落語で、さだは番組のテーマ曲『Birthday』で彼らを励ました。
放送後、ネット上には「感動しました」「涙が止まりませんでした」「出会った人が笑顔になっている姿に希望を感じた」といった声があふれた。桑田佳祐も自らのラジオ番組でこの回を紹介し「いい番組だった」と絶賛。5月30日放送の後編は、今年の最高視聴率15.1%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)を記録した。
「この石巻の回をやったということもありますが、震災後は、人のつながりっていいな、ありがたいな、という視聴者の声が増えています。震災を経て、鶴瓶さんも私たちも改めて人と人との縁が結ぶ、力強さというか温かさを、再確認できたと思っています。それを、視聴者の皆さんも感じてくださったのではないでしょうか。番組をいままでやってきたことの実績が、震災という不幸なことではありますが、こういったかたちで生かされたのかなと思っています」(前出・佐橋さん)
今年8月には、被災地の宮城県塩釜市を訪問。鶴瓶と野球解説者の佐々木主浩さん(43)が、昨年出会った家族と再会した(写真参照)。9月26日、10月3日に放送予定。