ロンドン五輪の出場権を順当に獲得した「なでしこジャパン」。キャプテンの澤穂希選手が多くの注目を集めるが、「なでしこ」は実に個性豊かな女性たちの集団である。ここでは、注目の新刊『なでしこジャパン栄光への軌跡 世界一のあきらめない心』を上梓したスポーツライターの江橋よしのり氏が、“高学歴アスリート”として知られる安藤梢選手(デュイスブルク)のエピソードを紹介する。
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W杯全6試合に先発し、ロンドン五輪予選も全5試合に出場した安藤梢選手は、歴代なでしこジャパンきっての“高学歴アスリート”です。栃木県内の女子No.1進学校といわれる宇都宮女子高に通っていた17歳の時に日本代表に選ばれると、「受験参考書を大量に持参して」W杯アメリカ大会に出場したといいます。
その後、筑波大学に進学しアテネ五輪出場を果たし、その年に高校体育の教員免許を取得。教育実習生として母校を訪問すると、「文武両道」をテーマに保護者向けの講演会までリクエストされたそうです。
卒業後、安藤選手は筑波大学大学院人間科学研究科後期博士課程に進み、同時に浦和レッズレディースとプロ契約を交わしました。博士課程で学びながらプロ選手として活躍するアスリートは、欧米でこそ珍しくはありませんが、日本スポーツ界では極めて異例のことです。
大学院に進学した頃から、安藤選手の体つきはみるみる変化していきました。研究室で培った最先端の科学的トレーニングと栄養学の知識のたまものでした。加速するドリブル、高速での切り返し、無回転シュートなど、運動能力が高くなければ出せない技術を、数々マスターした彼女は、50m走のタイムも29歳の現在が自己ベストだと胸を張ります。
そんなインテリの安藤選手ですが、実は天然キャラとしてもチームメイトや関係者をなごませています。遠征先のバスの中で居眠りしたまま、誰にも気づかれずに車庫まで寝過ごしたり、スタッフ用の短いソックスを手違いで支給された合宿では、手違いだと気づかず、無理矢理引き延ばして履いてグラウンドに出てきたり……。「高学歴なのにスキがあるところが、またかわいい」と、記者たちの間でも人気は高いようです。
また、安藤選手はある時、同じくドイツでプレーし近隣に在住する内田篤人選手(シャルケ04)と、地元のエルレブニスヴェルト動物園でデートしたことをブログで報告。ウッチーの熱烈な女性ファンたちから「うらやましい!!」というコメントをもらっていましたね。ちなみに、内田選手は安藤選手を「こずこず」と呼んでいるそうです。
撮影■江橋よしのり