厚生労働省が行なった平成16年の国民健康・栄養調査によると、40~74歳では、メタボリックシンドローム(通称・メタボ)が強く疑われる人は約940万人、その予備群と考えられる人は約1020万人、合計1960万人にも上る。男性では2人に1人がメタボか、その予備群と考えられており、女性のケースでは5人に1人という数字と比べると、非常に高い割合といえる。
その解消法として京都大学大学院の森谷敏夫教授が提唱しているのが、「ちょこまか運動」。5月7日に東京商工会議所で行なわれたセミナーでは、その内容や効果とともに、メタボを心配する男性にはショッキングなデータの数々が発表された。
厚生労働省のデータによると、20歳以上の摂取エネルギー量は、終戦後(昭和21年)は1903kcal。ところが、平成20年には1883kcalと、摂取エネルギー量は戦後を下回っている。
「現代人のエネルギー摂取量は、日本人がいちばんエネルギーを摂っていた時代(昭和50年の2226kcal)に比べると、1日約300kcalも減っています。仮にエネルギー摂取を1年間、1日300kcal減らせば、体重が15kgも減少してしまうほどの量です」(森谷教授)
「日本人の食事摂取基準(2010年版)」(厚生労働省)によると、30~49歳男性の推定エネルギー必要量は、2300~3050kcal。それを下回っているにも関わらず、肥満者(BMI値が25以上)の割合を見ると、男性は20歳台以上のすべての年代において、増加している。
「よく“飽食の時代”という言葉を聞きますが、それは真っ赤な嘘。日本人は、食べ過ぎで太っているのではなく、完全に“運動不足”によって太っているのです」(森谷教授)
アメリカで行なわれた「過食実験」では、非常に興味深い結果が出た。16人の参加者が、1日あたりの必要量に加え、1000kcalも余分なエネルギーを摂取。計算上、30日後には4kg以上の脂肪がつく量になる。ところが実際に計測してみると、予測通り4kg増加した人もいるが、中には0.5~1kgしか増えていない人がいた。
「この差を生んだのが、『NEAT(ニート)』(非運動性熱産生)です。NEATとは、立つ、歩くなどの日常的な活動によって消費するエネルギー量のこと。NEATの多い人、つまり普段から“ちょこまか動く”人は、1日1000kcal余分に摂っても、脂肪があまり増えなかったのです。
運動習慣のある人でも、1日のエネルギー消費量のうち、運動によって消費されるエネルギーは1割弱。ところが、NEATは4割以上を占めています。ですから、特別な運動をするよりも、日常的にちょこまか動き回ってNEATを増やすほうが、体重増加を抑えるには、よほど効率のよい方法といえます」(森谷教授)
例えばウォーキングの場合、30分間で消費できるエネルギー量は約75~100kcalといわれる。ところが、日常的に“ちょこまか”動き回るだけで、少なくともこの3~4倍、多くて8倍ものエネルギーを燃焼させることができるという。