東大生6人で結成された異色のインストバンド「ソノダバンド」。ドラム・ベース・キーボード・ギター・バイオリン・チェロの編成で、ロックやポップスを奏でる。当初は“東大イケメンバンド”と取り上げられた彼らだが、その実力と音楽性は海外からの反響も大きく、メジャーデビュー時の楽曲『Soul River』はYouTubeで再生数17万回。米国ツアーや韓国のジャズフェスにも出演し、世界に向けて着実に活躍の幅を広げている。メンバーを代表してリーダーの園田涼(26才)とギターの赤股賢二郎(27才)に話を聞いた。
――なぜインストバンドにしたのでしょう? 歌いたいと思ったことは?
園田:うまかったら歌ってたと思います。でもぼく、歌のアリ・ナシで音楽を判断するという感覚が全くないんです。自分の中ではすごく自然なことでした。それがバンド活動を始めてみると、インストバンドなんてほとんどなくて、あれ?と。そこで自分たちが変わってることに気づきました。レコード会社でも“歌がないとデビューできない”ってめちゃくちゃ言われたんですけど、数ある歌ものバンドの中に埋もれてしまうよりは、インストのほうが目立っていいんじゃないかとも思っていました。
――幅広いジャンルの楽曲が魅力的ですが、自分たちから見たソノダバンドの強みって?
園田:ぼくたちは普通のポップスをやっているような気持ちで演奏しているんです。バイオリンでメロディーを弾くこともありますし、6人がそれぞれ楽器を使って、歌っているイメージでやっています。お客さんの中にも普段インストは聴かないし、バリバリのJ-POPやロックを聴いてるけどソノダバンドだけは聴きに来るというかたも結構いる。歌ものに近い感覚でやっているインストバンドというのは珍しいんじゃないかと。
――チェロやバイオリンを加えたバンド編成も珍しいですが、偶然ですか?
園田:そうですね。ぼくが15才の頃に葉加瀬太郎さんのコンサートを地元の兵庫の田舎町で観たことも大きいです。もともとバイオリンへの憧れはありましたが、当然クラシックのイメージが強いじゃないですか。でも葉加瀬さんはポップスを弾いたりしていて、自由に面白い音楽ができるんだなって。(兵庫県の)灘高時代は後輩だった今のメンバーと3人で、ピアノ、バイオリン、チェロで演奏していたんですけど、バンドも好きだったので、そのふたつをくっつけたら面白いんじゃないかなって思って。
――YouTubeで十何万回と再生されている曲もあって、海外からも反響がありますよね。
園田:そこは、このバンドのいちばん面白いところかなとは思っていて、世界のどこでやっても受け入れてもらえるはずという自信があるんです。基本的に日本の音楽って良くも悪くもカラーが強いと思うんですけど、ソノダバンドは、年代、ジャンル、色んな国の音楽が混じっている。以前、アメリカの古いジャズクラブでライブをやったときに、聴いてくれた80才くらいの黒人のおじいちゃんが「よくはわからないけど、お前らの音楽にぼく達黒人が代々受け継いできた何かとシンクロする部分を感じた」と言ってくれたことがありましたが、つまりはそういうことだと思うんです。
――全員東大というだけでなく、音楽の才能もあるのはすごいですね。
園田:うーん、でも東大に悪いなって思うぐらいです。だって、“ぼくは音楽やりたいけど東大入る”って意味がわからないじゃないですか。東大に入っていろいろな人と出会って友達になると、志を持って入った人たちは本当にたくさんいるわけですよ。でも逆にそういう人たちがいたからこそ、なんか自分は違うな、みたいな気持ちはメンバーそれぞれも感じていて、そんなメンバーが6人集まったような気がしています。自分たちは音楽をやっている方が面白いじゃないかと。
――その“違和感”って、具体的に言うと?
園田:うーん…なんかよくわからなかったんですよ。例えば官僚や政治家になって国を将来動かすだとか、経済界のリーダーになるだとかという生き方がぼくは正直、あんまりかっこいいと思わなくて。すごく偉そうに言えば、“本気で頑張れば、そういうものにはいつだってなれる”と思っていたのと、そういう意味で、音楽はどうしても自分の思い通りにならないんですよ。ぼくは3才から20年以上、ピアノやキーボードを弾き続けていますけれど、それでも音楽がわかったなんてことは一度もないし、やればやるほどわからなくなる。だから東大にいた中で逆に音楽はやりがいがある、面白いと思っていましたね。
――同級生が就職していく中で、自分たちは音楽の道を進む。その気持ちは?
園田:たまに、うらやましいなと思うときはありますよ。よくも悪くも、組織に属することで社会の中の安定ももちろんあると思うし。ただ、ぼく自身は官僚も医者も弁護士も全然かっこいいと思わなくて、ホールの真ん中にスポット浴びてピアノを弾いているピアニストほどかっこいい商売はないって思っているんです。小学校の卒業文集にも、将来の夢はエレクトーンプレーヤーって書いてました。コンクールも落ちまくっていましたけど、なぜかプロになる気持ちだけは、上等にあって(笑い)。
――音楽の道を進むことについて、家族や周囲の反対は?
赤股:他のメンバーの親は割と“好きにやりなさい”というスタンスですけど、うちはずっと父が反対でしたね。就活して内定も出ていたタイミングでメジャーデビューの話が来たんです。それもアメリカのフェスでライブをした直後でした。ヤマハのバンドコンテストで国内1位を獲った副賞でエントリーすることができて、さらに出演もできたんです。そのライブが熱狂的な反応があってすごく楽しかったので、今は就職するわけにはいかないなと思って休学したいと父に伝えたら、「何を考えているか理解できない」とバッサリ否定されて…。それでも説得し続けたら「ちゃんと自分でメシ食べれるんやったらやってみなさい」という感じで、一応許されました。
――目指すところは?
園田:若いロックバンドで日本武道館で華々しく1回やったけど、それで終わりみたいなバンドって正直いると思うんです。大御所のかたがすごいと思うのは、キャリアを重ねながらコンスタントに地方でもホールを満杯にしている。若いバンドはなかなか周れない田舎の2000人のホールが、葉加瀬太郎という存在を見たくて全席埋まる。これが本当の人気だなと思ったんです。そういうアーティストに自分もなりたいですし、最初のきっかけが海外だったので、のちのち世界のいろんな国を周ってライブしたいという願いもありますね。
※写真:左から熱田哲(violin)、小山田和正(drums)、橋本怜(cello)、園田涼(keyboards)、牧瀬崇之(bass)、赤股賢二郎(guitar)
【sonodaband(ソノダバンド)】
「ボーカリストがいないのに歌が聴こえてくる」と評される。東大在学中に結成、2010年メジャーデビュー。『サマーソニック』『情熱大陸ライブ』などに出演。アメリカでの世界最大規模の音楽フェス『SXSW』には2年連続出演。これまで由紀さおり、郷ひろみ、谷村新司、平原綾香ら多数のアーティストとコラボしているほか、CMや番組のテーマソングにも多く起用されている。5月30日にAAR Japan(難民を助ける会)とのアフリカ訪問を報告するライブ&トークイベント、夏には渡辺美里と福島でのチャリティーコンサートに出演する。