「母が愛した青葉台の自宅を真空パックして、その空気感をとっておいたので、ファンのかたがたに味わってもらいたいんです。母は人を招くのが大好きだったので…」。
こう話すのは、美空ひばりさんの長男・加藤和也さん(41才、弟・かとう哲也さんの長男で後にひばりさんの養子に)。京都・嵐山にある『美空ひばり座』閉館(5月31日)と同時に、ひばりさん没後25年めの来年5月、東京・目黒の自宅を『美空ひばり記念館(仮)』として一部を開放することとなった。
高級住宅街の一角にあるひばり御殿は174坪、鉄筋3階建て。今も外観を見るために遠方から多くのファンが訪れるという。
「完全予約制で1日約160人限定の公開予定」(前出・和也さん)というひばり御殿を、一足お先に特別公開していただいた。
現在、ひばり御殿には料理番と付き人含め3人の女性と、愛犬チャッピーから4代目のヨークシャーテリア・サンタが生活している。いつでもひばりさんが“帰ってこられるように”という思いを込めてとのこと。
「お嬢(ひばりさんの愛称)はファンをとても大事にしていました。ファンからの贈り物は必ず手にしたり身に着けたりする人でしたから、必ずお供えしています」(料理番の女性)
仏間に飾られていたのは、CDや人形、胡蝶蘭、ファンからの手紙、千羽鶴など贈り物の数々。ひばりさんの遺影は「(私たちの中では)亡くなっていないので」飾られていないという。仏間の隣にある10畳の茶の間も当時のまま。張り替えていないという畳は今も新しいまま。ひばり御殿でのエピソードを尋ねると、
「ピアノでメロディーを一度聴いただけなのに2時間後にはレコーディング、なんてこともしょっちゅうでした。2階の部屋にいても1階の水道の蛇口をひねる音すら聞こえちゃう耳の良い人でした。
自宅で好んで召し上がっていたのは素朴な田舎料理でしたね。里芋の煮っころがし、アジの開き、すいとんとか。ある日、すいとんに使う、いつもの卵が売り切れていて、別の銘柄の卵を使ったら“卵変えた?”って聞かれたことも。五感すべて、とにかく繊細な人でした。
それに、とってもあったかい人。地方公演など家を留守にする度に“(生活費に)困ったら何か売っていいからね”と電話をかけてくるくらい、私たちにも気を配ってくれるんです」(前出・料理番の女性)
ひばり御殿には、あれから24年経った今もひばりさんの“匂い”が残されたままだ。
※女性セブン2013年7月4日号