「『島耕作』は不倫漫画ではないですよ。ごく初期にちょっとだけありましたが、それだけです。島耕作は不倫しまくってるというのは誤解です。『黄昏流星群』にしても、フリーになった男女の関係を描いてます」と語るのは、レギュラー出演しているラジオの収録を終えた、漫画家の弘兼憲史さん(65)。
「不倫漫画といえば弘兼先生」と、不用意に口を滑らせた記者を諭すように出てきたのが、冒頭の言葉だ。そんな話になったのも、テレサ・テンのニューアルバム『テレサ・テン LOVER’S ~18のラブストーリー~ 黄昏のひととき、あなたを想う』のジャケットイラストを弘兼憲史さんが描き下ろしているため。
テレサ・テンは生きていれば60歳。42歳で夭逝し、死後18年が過ぎた台湾出身の歌手だ。いまだに根強いファンも多く、特に40歳前後の「アラフォー世代」女性には「ひたむきに愛する人を想う曲」に思い入れる人も少なくない。またそうした作品の中でも、不倫がテーマの曲に特に魅力を感じる――という意見も多いようなのだ。
アルバムの企画・選曲を行なった“仕掛け人”は、オトナの歌謡曲プロデューサー・佐藤利明さん(49)。娯楽映画研究家として、寅さんやクレイジーキャッツに詳しいが、由紀さおりとピンク・マルティーニのヒットにも関わるなど、音楽プロデューサーとしても活躍している。「今年はテレサ・テン生誕60周年なので企画しました。キーワードは不倫と黄昏。テレサが女性の心を歌った18曲をコンピレーションしたんです」
仕掛けるに当たってのターゲットは「団塊世代の男性と、アラフォー女子の両方」と佐藤さんは分析する。「今のアラフォー女子が、カラオケでテレサ・テンの不倫歌を熱唱して涙しているという現象があるんです。テレサ・テンはナツメロではなく、今のサウンドとして受け入れられているということでしょう。そして、アラフォー世代との男女関係といえば団塊世代です。この人たちは、リアルタイムで同世代のテレサ・テンを見てきています。団塊、黄昏、男女関係といえば、弘兼先生ワールドです」と、佐藤さんは弘兼さんにジャケットイラストの依頼をした。